2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16H06797
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
大風 薫 お茶の水女子大学, 基幹研究院, リサーチフェロー (70783348)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 中年期未婚女性 / 老親との関係性 / 生活設計 / 老後不安 / 資産形成 / ネットワーク / 親子役割の変容 / 老親との同居 |
Outline of Annual Research Achievements |
生涯未婚女性が2030年に約23%に達するとの見通しがある中(藤森 2010)、配偶者を持たないライフコースを歩む女性の老後の生活設計や生活の質の向上は社会的な重要課題である。しかし、現状、生涯未婚者となる可能性の高い女性を対象とした研究知見は極めて少なく、これまで主として明らかにされてきたのは、独身であることに対するレッテルや心理的負担感であり、独身女性の実質的な生活課題を解決するための知見は未だ蓄積不足である。そこで本研究は、中年期以降の独身女性に注目し、老後を見据えた生活設計を促進・阻害する要因を質的・量的研究の両側面から明らかにすることを目的に行い、本年度は質的研究(インタビュー調査)を実施した。 インタビューに関連する研究倫理については、お茶の水女子大学で随時実施される研修に出席し、基本的な考え方を理解した。また、調査実施段階では、お茶の水女子大学倫理審査委員会の承認を受けた。 インタビュー調査は、平成29年2-3月にかけて、40-60歳までの首都圏在住の未婚女性計20名を対象に行った。調査対象者は、①雇用形態:「正規社員」「非正規社員」「無職」、②居住形態:「親との同居」「親との別居」、③「親の状況」:「両親とも健在」「片親のみ健在」と割り付けた。 インタビュー時間は約2時間で、普段の生活状況、仕事や収入の現況、老後に向けた経済的な備え、親(きょうだいを含む定位家族)との関係性、当面や老後を見据えた場合の生活上の心配事や不安などについて、半構造化面接を実施した。 インタビュー終了後は、内容についてすべて逐語録を作成した。現在は、佐藤(2008)をもとに、インタビュー内容に関する定性的コーディングを実施中である。同時に、対象者の属性による違いを加味しながら、分析の方向性を検討し、平成29年度の発表準備を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時の平成28年度の研究計画は、①生涯未婚女性およびその予備軍20名を対象にしたインタビュー調査を実施・分析する。②同時に、質的研究の知見を活かしながら、博士論文で構築した概念モデルを修正・拡張し、次年度に実施する量的研究の調査票作成作業に着手する。③質的研究の成果を平成29年度に発表するための準備を行うというものであった。 これに対する進捗は、①インタビュー調査:予定通りのスケジュールで、かつ、対象者の割り付けもほぼ当初計画通りに実施することができた。また、分析の第一段階として、すべてのインタビューについての逐語録を作成し、定性的コーディングを開始するところまで進展した。②インタビューを実施しながら、同時並行的に博士論文で構築した概念モデルの修正・拡大も検討し、次年度に実施予定の量的調査の質問項目案についての検討を開始できた。③平成29年度に予定しているインタビュー調査の発表時期や発表方法の計画も作成した。以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究計画は、①インタビュー調査の分析および発表②量的調査の実施と分析である。まず①インタビュー調査については、平成28年度に続いて分析を継続し、その結果について、日本家族社会学会(9月)、日本家政学会家族関係学部会(10月)にて口頭報告、生活経済学研究(9月)、家族問題研究会(12月)の学会誌への投稿を予定している。したがって、平成29年度の前半は、インタビュー調査の分析とその報告のための準備を主に実施する。 次に、②量的調査については、①の作業と同時進行させながら、調査票で測定する主要な概念の整理と質問項目を作成し、10月までに調査票案を作成する。量的調査の方法はインターネット調査で、対象者は、40-60歳までの未婚女性500名以上とする。調査票案を作成後は、調査会社との打ち合わせを通して調査票を修正・完成させ、年内までに調査を実施する。 翌年1-3月には、調査データのクリーニング、記述的分析、多変量解析を行い、研究会やゼミなどでの結果報告を行いながら、論文執筆準備を開始する予定である。
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