2016 Fiscal Year Annual Research Report
危機下の産地と状況打開の内部プロセス:企業家活動と産地組織の共鳴と相互変容
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16H06802
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
松原 日出人 一橋大学, 大学院商学研究科, 特任講師(ジュニアフェロー) (20779582)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 産地革新 / 企業家活動 / 中間組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,主に理論的な側面からの考察と新規事例産地に係る調査を進めた。 まず理論面については本研究のベースとなっている企業家活動の視座からみた産地革新のプロセスについて研究報告を行い,研究者からフィードバックを得た。これらのコメントやその後の考察を踏まえ,産地革新に関わる一連のプロセスを明らかにしていくためには,そのプロセスの各フェーズの担い手や役割内容の差異により注目する必要があること,そして,革新に際して中心的な注目を集める企業家だけではなくそれを地域のプロセスに転化させうる主体として,地域を統合する中間組織によって果たされる役割にもより焦点を当てる必要があることを確認した。 新規事例産地に関しては,当初予定していた産地についての資料調査を進めた。特に県段階の資料について約30年間分にわたる分量の月刊資料を収集できたことなどは,歴史分析を重視する本研究にとって重要な進展であった。また,それと並行して新規事例産地の他候補についての探索も改めて行った。そのことにより,本研究が当初予定していた以外の産地群からも,調査可能な産地を新たに発見することができた。歴史資料は長期間にわたる一連のメカニズムの解明を実現するためには不可欠である。本研究が着目する産業は歴史資料が比較的多いとはいえ,それでも歴史資料の消失によって分析が不可能になっている産地が多くなりつつあるため,こうした資料発掘ができたこともまた重要な成果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新規事例産地に係る情報収集に想定以上の時間を要したため進捗がやや遅れている。事例産地について見込んでいた歴史資料が消失しアクセスできなかったこと,また,その場合に予定していた代替資料については収集できたものの不可欠な時系列データの一部を確認できなかったこと等の問題が生じた。資料調査を継続し平成28年度末に時系列データを不完全ながらも入手できる見込みを得たが,データの確認・分析および論文執筆は平成29年度に持ち越さざるを得なくなった。 ただし,以上の問題を受けて研究計画の再検討を行い,事例候補を再探索し各産地へのヒアリングを行った結果,歴史資料を活用した調査・分析が見込める産地を新規に発見することができた。当初予定していた産地の情報収集の遅れという点で進捗についてはやや遅れていると評価せざるを得ないが,その問題の解決に目処が立っただけではなく,さらに新規事例候補を見つけられたという意味では事例分析を重視する本研究内容をより充実させる前進もあったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り,データ収集上の問題により平成28年度に予定していた新規産地に係る資料収集・分析,論文執筆を平成29年度に持ち越さざるを得なくなった。しかし,当初予定していた産地だけではなく,その代替候補の探索を並行したことで他事例についても歴史資料が存在し本研究に資する分析が可能であることがわかった。そのため,新たに新規事例を追加しつつ速やかに資料の収集・分析,論文執筆を進める。また,ジャーナルへの投稿ならびに,ワーキング・ペーパーを通じた成果公表も随時行っていく。
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