2016 Fiscal Year Annual Research Report
特殊環状ペプチドをイメージングツールとするがん微小転移および薬剤耐性に関する研究
Project/Area Number |
16H06830
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
佐藤 拓輝 金沢大学, がん進展制御研究所, 特任助教 (20781173)
|
Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
|
Keywords | HGF / Met / 環状ペプチド / イメージング / 薬剤耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
受容体型チロシンキナーゼであるMetの過剰な活性化、およびそのリガンドである肝細胞増殖因子 (HGF)の発現上昇は、種々の腫瘍組織において、分子標的治療薬などの化学療法に対する耐性獲得に寄与することが知られている。そのため、HGF/Metの腫瘍組織における発現分布は、腫瘍特性を理解する上で重要なバイオマーカーといえる。本研究では、我々が最近同定した、HGF・Metそれぞれに対し、高い親和性・選択性を有する環状ペプチドを、分子イメージング分野、特にPET(ポジトロン断層法)プローブとして発展的に応用し、低侵襲で腫瘍特性を理解するための高感度検出・診断技術の確立を目指すものである。本年度は、プローブ候補分子の活性評価および適正評価と、Met遺伝子欠損細胞株の樹立を試みた。 ペプチドをPETプローブとして使用するためには、分子内に放射性同位元素 (RI)を標識するためのキレータ構造を付加する必要がある。そこで、構造修飾によるペプチド活性への影響の有無を評価した。HGFに対し結合活性および阻害活性を有する環状ペプチドに、PETプローブ用RIであるCu-64を標識するためのキレータ構造を付加した類縁体を合成した。HGFへの活性阻害を指標に、両分子間で活性の比較を行った。その結果、修飾による親和性への影響はほとんど認められず、活性を保持していた。 また、イメージングの陰性対照の細胞として使用することを目的に、Met遺伝子欠損細胞株の樹立を試みた。細胞株樹立に向け、TALENシステムならびにCRISPR/Cas9システムを用いることで、肺がん細胞株PC-9細胞のMet遺伝子欠損細胞株を樹立することに成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度の目標は、我々の保有する環状ペプチドのPETプローブとしての適正評価および個体レベルでの動態評価であった。キレータ修飾したペプチドは、その活性を保持していることを確認したが、実験動物へ投与するために行った逆相クロマトグラフィーでの精製時に析出する課題が生じた。そのため動物実験への移行が遅延している。現在、別のキレータ、ペプチド配列の組み合わせで合成を依頼中である。 一方、Met遺伝子欠損細胞株の樹立や肺がん細胞を用いた担癌マウスモデルの作製は、計画通り達成している。
|
Strategy for Future Research Activity |
ペプチドの難溶性に対する解決策として、ポリエチレングリコール (PEG)鎖の付加を検討している。これにより、溶解性の向上と生体内での薬物動態の安定化が期待される。 並行して、免疫不全マウスを用いたヒト肺がん細胞の同所移植モデルの構築、およびヒトHGFノックイン免疫不全マウスを使用した「ヒト化モデル」の構築を進め、in vivoでのプローブ評価に備える予定である。
|