2016 Fiscal Year Annual Research Report
Development of roughened current collector by an electroplating method
Project/Area Number |
16H06838
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
清水 雅裕 信州大学, 学術研究院工学系, 助教 (90780601)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 電気めっき / ポリアクリル酸 / 粗面化集電体 / ナトリウムイオン電池 / スズ負極 |
Outline of Annual Research Achievements |
スズ(Sn)はNaと合金化することで炭素系材料の3倍以上の極めて高い理論容量を有するため,有望なナトリウムイオン電池用負極活物質となり得る.しかしながら,Snはその大きな容量を発現する反面,Na吸蔵-放出(充放電)時の激しい体積変化により集電体基板から剥離するため,その性能は乏しいものとなる.この課題解決のためには活物質-集電体間の密着性の改善に加え,電極構造にSnの体積変化を収容する空間を設計・導入することが必要となる.研究代表者らはこれまでに,硫酸銅(Cu)めっき浴にポリアクリル酸を添加することで基板からCuシートが成長したような三次元構造体を作製することに成功している.本年度はシート成長のメカニズム,すなわちポリアクリル酸が銅の析出に及ぼす効果について詳細に検討した.ポリアクリル濃度の増大にともない基板表面の粗さが大きくなり,1.0×10<sup>4<sup> M以上において,シート状の成長が認められた.また,透過型電子顕微鏡解析より,1つのシートは粒界をもたない極めて高い結晶性を有していることが分かった.X線回折装置を用いた極点解析などから,そのシートが(1 1 1)方向に優先的に成長していることが示唆された.種々の粗面化度を有する基板に対してSn合剤層を塗布した電極において,スタッドピン型引張試験により活物質層-基板間の密着性を評価した結果,一般的な平滑基板と比較して最大で2倍近く強度が増すことが分かった.このように高められたアンカー効果は,充放電中のSnの体積変化時において極めて有効に機能し,長期サイクルにわたって元来備え持つ高容量を発揮させることができるものと期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に予定していたポリアクリル酸が銅の析出形態に与える影響については概ね明らかにすることができた.また,電池性能を決定付けるものと予想される表面形状について,その濃度,めっき時の電流密度を調節することで基板表面の粗面化度を任意に制御することが可能となった.めっき浴中およびめっき膜内部でのポリアクリル酸の状態については明らかになっていない部分があるが,当初に目標としていた三次元基板の設計指針を構築し,電極集電体への応用に早い段階で着手することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
めっき浴中におけるポリアクリル酸の溶存状態・Cuイオンへの配位状態については赤外線・ラマン分光装置を,基板表面への吸着現象については水晶振動子マイクロバランスを用いて明らかにする予定である.初年度に構築した三次元基板の設計指針に基づき,Sn負極に適した集電体を作製する.H29年度は基板形状がSn電極のナトリウムイオン電池負極特性におよぼす効果について検討する.Snの激しい体積変化時において基板表面に成長したCuシートの倒伏・崩壊が懸念されるため,充放電後の電極の断面構造を詳細に観察する.また,これを克服する機械的強度を持たせるべく電気めっき条件についてもさらなる検討を行う.また,リチウムイオン電池負極およびマグネシウムイオン電池負極などにも適用を検討する.
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