2016 Fiscal Year Annual Research Report
洋上風力発電の導入に向けた漁業関係者との合意形成に関する研究
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16H06855
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
本巣 芽美 名古屋大学, 環境学研究科, 寄附講座講師 (40714457)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 合意形成 / 洋上風力発電 / 漁業調整 / 海洋空間計画 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、(1)愛知県・三重県の漁業に関する協定書締結に関する合意形成の調査、(2)羽田空港の建設・拡張における漁業者との協議に関する文献調査、(3)海外の海洋空間計画に関する文献調査、(4)種子島ロケット打ち上げ期間の通年化に関する新聞記事の収集を行った。具体的には以下の通りである。 愛知県と三重県の漁業協定については、両県において約60年にわたる漁業調整問題が、なぜ平成23年に約半年の期間で協定書を締結できたのかを、合意形成に関する先行研究と比較し分析した。その結果、Susskind & Cruikshankの合意形成手法と多くの共通点があったこと、また、本事例の特徴として、協議が中断しない合意形成の仕組みが採用されていたことなどが明らかとなった。また、今後の開発事業に活かしうる知見として、漁業調整委員会の活用や本事例の合意形成手法を応用できる社会的条件などを検討した。本成果は学会誌に投稿中である。 羽田空港の建設・拡張に関しては、文献調査により、東京湾の埋め立てをめぐる漁業者との合意形成に関する歴史的系譜と漁業者との調整内容を整理した。太平洋戦争の終結後は、米軍による滑走路拡張のために海岸線埋め立ての設備の提供と飛行場付近一部住民の立ち退きが命令され、米国から施設が返還された後は、漁業協同組合と東京都の交渉により漁業補償が行われた。昭和37年には羽田の漁業共同組合が漁業権を全面放棄し、その後B滑走路、C滑走路、D滑走路の延長などが行われた。これらの交渉過程と内容について整理した。 海洋空間計画に関しては、英国やドイツなど欧州の資料を収集し、海洋空間計画の概要と洋上風力発電事業のためのゾーニングについて整理した。 また、平成28年度は、平成29年度に詳細な調査を予定している、種子島ロケット打ち上げ期間の通年化に関する漁業関係者との合意形成に関する新聞記事を収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は研究に必要な重要な文献を多く収集でき、愛知県と三重県の漁業協定に関しては査読論文の投稿ができた。羽田空港に関しては、文献により漁業補償交渉について調査することができ、合意内容や合意に至るまでの期間・手続きなどを調査することができた。種子島ロケット打ち上げ期間の通年化に関しては、予想していたほど新聞記事数は多くなかったが、どのような協議会が立ち上げられ調整が行われたのかについて調査を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き海外の海洋空間計画について調査を進め、海域を利用するステークホルダーとの海洋の利用調整について整理するとともに、今後は主に、種子島ロケット打ち上げ期間の通年化と、新潟県岩船沖油ガス田開発に関する漁業者との合意形成に関する文献調査と聞き取り調査を行う。そして最後に、本研究課題のまとめとして、洋上風力発電事業や他の海洋再生可能エネルギー事業への本研究成果の転用を検討し、研究成果を公表する。
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Research Products
(2 results)