2016 Fiscal Year Annual Research Report
大学のハラスメント相談における「加害者とされた相談者」のアセスメント方法の開発
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16H06856
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中澤 未美子 名古屋大学, ハラスメント相談センター, 助教 (80777300)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | ハラスメント / ハラスメント防止・相談 / 未認定加害者 / 加害者 / アセスメント |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、大学のハラスメント相談における「加害者とされた相談者」のアセスメント方法の開発を目的としている。具体的には、三つのツールを作成することを目指している。三つとは、(1)アセスメントシート、(2)相談員が実施するアセスメントのプロセスに「加害者とされた相談者」自身が参加するための省察用ワークブック、(3)相談員によるアセスメントの結果とそのプロセスに関する相談員用自己チェックリスト、である。社会福祉学分野でのハラスメント相談研究は少なく、本研究は新規性がある。社会福祉学の重要な概念である「人権」ならびに「共生」を軸に、たとえハラスメントをしたと疑義がある者であっても、その者の人権に配慮し支援対象として捉える試みは社会的意義があり、人権擁護や社会的包摂の考え方をハラスメント問題の解決に導入することは、大学のハラスメント相談・防止対策への新たな示唆となる。また、アセスメントの正確性とその内容の豊富化は、「加害者とされた相談者」当事者参加により方法が強化され、これまでの相談員の一方向からの趣が強かった偏りあるアセスメントの補強を期待することができ、実践に学術的な検証を加えることが可能となる。以上より本研究は、「加害者とされた相談者」支援のジレンマの克服に繋がり、現場応用性が高く、ハラスメントの解決に向け「加害者とされた相談者」の省察行動を発展させ、ハラスメントの防止への寄与が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度においては、量的データよりも質的なデータ収集を優先させ、国内の大学で働くソーシャルワーカー(以下CSW)に(未)認定加害者の支援に係わった経験等について複数のインタビュー調査をおこなった。これらのデータより対人援助職の人権意識等を抽出し、ツールに反映させる予定である。ツールの作成は研究1年目で未着手の状態であるが、社会福祉学を基盤とする援助職に関する基礎データは豊富化してきている。更なるデータ収集と、学際的に取り組むことが重要と考えているため、CSW以外にもインタビューの対象を広めていく。 なお、本研究における「加害者とされた相談者」は、認定された加害者ではなく未認定加害者に焦点化している。今後は認定加害者への対応も射程に入れることを想定しているため、名古屋刑務所を訪問した。 以上の活動により、ハラスメント問題において未認定状態での「加害者とされた相談者」への具体的な対応方法は、相談員個人の技量のレベルに滞留しておりエビデンスに欠けている現状が示唆されている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、3ツールの開発に着手し効果検証を目指す。具体的な開発方法は以下の通りである。アセスメントシートおよびアセスメントチェックリストは、既にインタビューデータが揃いつつある。分析をおこない、項目数やその記載内容等を策定する。「加害者とされた相談者」自身が使用するワークブックは、各種ハラスメントに共通したものの開発を目指す前に、例えばアカハラの「加害者とされた者用」を開発し、様々なハラスメントに汎用できるか試用する。試用に関しては、使用対象が限定され、また倫理的な検討も必要なため、実際の相談者に使用が難しい場合は、相談員にワークブックを見てもらい使用感の収集をおこなう。 これらのツールは、効果検証および普及方法も熟慮する。「加害者とされた相談者」を「加害者」として扱う危険性を対人援助職が自覚的に扱うことができるようになるためである。本研究は、決して「加害者とされた相談者」のみを支援対象としているわけではない。「加害者とされた相談者」の陰には「被害を訴える相談者」が存在する。その者の救済を第一義に、ツールの内容を点検する。 具体的には、学際的な取り組みも必要と考えるため、社会福祉学関係の学会のみならず、臨床心理学系各種学会、研究会、社会学系各種学会研究会に出席し、情報収集と知見の発表を行い、精度を高めたい。またできあがったツールに関しては、本研究の成果物とし、名古屋大学ハラスメント相談センターのHP等に掲載する予定である。
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Research Products
(7 results)