2016 Fiscal Year Annual Research Report
大気圧マイクロ波水蒸気プラズマによる高密度かつ高純度活性種の生成と応用
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16H06859
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鈴木 陽香 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (80779356)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 大気圧プラズマ / 水蒸気プラズマ / マイクロ波放電 |
Outline of Annual Research Achievements |
大気圧プラズマは真空装置を用いず多量の活性種を供給できることから、様々な分野への展開が期待される。一方で、大気中でのプロセスは真空プロセスと違い、空気が混入するため、プロセス条件を制御することが困難であった。そこで、本研究では簡易な設備で外気を遮断することにより大気中のプロセス環境を制御し、高密度かつ高純度の活性種を利用する大気中プラズマプロセス技術の確立を目的としている。具体的な手法としては、プラズマ及びプロセスにおける処理部の周囲に液体の水を用いてシースを形成し、外気を遮断する。更に、100% 水蒸気を放電ガスとして用いてマイクロ波プラズマを生成することにより、純度の高い水由来の活性種を効率的に大量生成し、これを応用展開することを計画している。 平成28年度においては、まず、誘電体バリア放電(DBD)を用いたプラズマジェットの周囲に水シースを形成できる簡易装置の製作を行い、ヘリウムガスを用いてプラズマ生成を行った際の、水シースによる大気遮蔽の効果について発光分光により調査を行った。その結果、プラズマジェット周囲に水シースがある場合は大気由来の窒素発光がほぼ完全に抑制され、水シースによってプラズマ内のガス純度が向上していることが確認された。 また、本研究代表者はこれまで「マイクロ波を用いた大気圧高密度プラズマ生成と応用」に関する研究を進めており、マイクロ波放電が安定した分子ガスプラズマ生成に有効であることが過去の研究で明らかとなっている。そこで、次に、水シースを配した水蒸気プラズマ生成が可能なマイクロ波プラズマ装置の立ち上げを行い、水蒸気プラズマ生成実験を行った。その結果として100%水蒸気の大気圧プラズマ生成に成功しており、DBD簡易装置と同様に水シースによるプラズマへの大気混入の抑制に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では簡易な設備で外気を遮断することにより大気中のプロセス環境を制御し、高密度かつ高純度の活性種を利用する大気中プラズマプロセス技術の確立を目的としており、プラズマ及びプロセスにおける処理部の周囲に液体の水を用いてシースを形成し、外気を遮断する。更に、100% 水蒸気を放電ガスとして用いてマイクロ波プラズマを生成することにより、純度の高い水由来の活性種を効率的に大量生成し、これを応用展開することを計画している。初年度である28年度においては水シースを配したプラズマ装置立ち上げを予定していた。 当初、DBDプラズマジェットの周囲に円筒状の水シースを生成すると、重力によって下流側のシースがしぼみ、プラズマ直下に水が溜まる現象が確認された。この水だまりはプロセスにおいて基板を水で覆うことから、処理効率を低下させる恐れがある。そこで、円筒を外に広げる構造としたところ、水だまりの発生を抑制しつつ、水シースを形成し、DBDプラズマを大気から遮蔽することに成功した。 また、DBDでは放電ガスがヘリウムやアルゴンといった希ガスに限定されるため、プラズマ源をDBDから、分子ガスプラズマ生成に有利なマイクロ波プラズマ源へと変更した。電磁界シミュレーションを援用して装置構造の最適化を行い、上記のDBD装置で得られた水シース形成についての知見を活かし、マイクロ波プラズマ装置の製作を行った。 また、水蒸気導入系では複数のヒーターと温度計で温度制御を行いつつ、高温対応のマスフローコントローラを用いることにより安定して水蒸気ガスをプラズマに供給し、水蒸気プラズマの生成を行い、水シースによる大気遮蔽の効果も発光分光から確認された。 更に、今後の応用展開におけるプロセスの最適化実験のために、水蒸気に他の単純ガスを意図的に混入させる構造も導入している。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度の研究において、プラズマ周囲に水流によるシースを形成することによって、放電ガスへの大気の混入を抑制することが可能となった。また、大気圧マイクロ波放電により水蒸気を放電ガスとしたプラズマ生成を行うことにも成功している。さらに、発光分光から、大気混入の抑制によって窒素スペクトルの発光強度が減少しただけでなく、放電ガス由来の発光の増加が確認されており、通常の大気圧プラズマと比較してガス純度の制御性の向上及び活性種生成量の増加が示唆される。 次年度においては、このプラズマ生成技術を用いて応用展開についての調査を行う。具体的にはフォトレジスト剥離(アッシング)の実験を試みる。フォトレジストが塗布された基板を水シース内の水蒸気プラズマ直下に置き、プラズマを照射することによって、処理された基板の処理速度の評価、及び表面解析を行い、本研究のプラズマ装置の表面処理への可能性の指針を得るとともに、有用性を実証する。また、プロセスの最適化のために、水蒸気に他の単純ガスを意図的に混入させることも検討している。
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[Presentation] Shielding of plasma jets from ambient air by water flow certain2017
Author(s)
Hikaru Senba, Yosuke Koike, Haruka Suzuki and Hirotaka Toyoda
Organizer
9th International Symposium on Advanced Plasma Science and its Applications for Nitrides and Nanomaterials/10th International Conference on Plasma-Nano Technology & Science
Place of Presentation
CHUBU UNIVERSITY, Aichi, Japan
Year and Date
2017-03-01 – 2017-03-05
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