2016 Fiscal Year Annual Research Report
薄膜組成制御によるトポロジカル量子相転移の物理構築
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16H06860
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
浦田 隆広 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (30780530)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | トポロジカル絶縁体 / ラインノード半金属 / 薄膜 / 量子相転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、トポロジカル絶縁体及びラインノードディラック電子系として提唱されているCaAgX(X = As, P)に着目し、Xサイトを置換することでトポロジカル相間での量子相転移を観測することを目的としている。 初年度は、分子線エピタキシー(MBE)法を用い、基準物質として据えたトポロジカル絶縁体候補物質CaAgAsの薄膜成長に取り組んだ。その結果、単相のCaAgAs薄膜の成長に成功した。しかし、面内の配向性を調べてみると、いくつかのドメインタイプが存在している事が明らかになった。膜質を向上させるため、成長条件を見直し、特定の基板を用いることでドメインタイプを減らすことに成功した。その結果、磁場中輸送特性からは、トポロジカル絶縁体に特徴的である弱反局在効果として理解できる振る舞いを観測した。膜厚依存性からも、表面伝導の存在を示唆する結果を得た。しかし、印加磁場方位依存性や理論モデルによるフィッティング結果は、2次元表面伝導で期待されるものとは異なっており、これは表面のラフネスに起因していると考えられる。上記実験と並行し、CaAgP薄膜の成長を行った。こちらも単相の薄膜成長に成功し、磁気抵抗効果からは通常の金属でよく見られる2次曲線的な磁場依存性を観測した。これはスピン軌道相互作用がAsからPにすることで減少し、弱反局在効果が消失したことを示唆する。今後はこれら2つの系の混晶を形成し、置換量に対する輸送特性の変化から、量子相転移を調べていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
MBE装置の不具合等も相まって、CaAgAs薄膜の膜質向上に想定外に多くの時間を費やしてしまい、CaAgPや混晶系CaAg(As,P)の成長が遅れている。一方で、比較的短期間でCaAgPの単相薄膜が得られたことは特筆すべきであり、今後の加速的な進展が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは母物質であるCaAgAs及びCaAgPの膜質を更に向上させたい。本系は六方晶の主軸が面内を向く形で成長しやすいことが分かったので、配向性の向上のために、あえて対称性の低い基板を用いる。並行し、混晶系CaAg(As,P)の薄膜成長を行い、磁場中輸送特性の測定・解析を行う予定である。以上を通し、トポロジカル相間の相転移を議論する。
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