2016 Fiscal Year Annual Research Report
近縁系統マウスを用いた高中性脂肪-低HDLコレステロール血症の原因遺伝子の同定
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16H06865
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小林 美里 名古屋大学, 生命農学研究科, 講師 (20456586)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 高トリグリセリド / コレステロール / 血中脂質 / 脂質代謝異常 / 遺伝解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国の死因の約25%を占める動脈硬化性疾患の発症には、脂質異常症が強く関与する。我々は、近交系統C3Hマウスの亜系統であるC3H/Sマウスが高TG血症かつ低HDL-Chol血症を示すことを見出し、その原因遺伝子を同定することを目的とした。 (1) 高TG血症マウス(C3H/S)の食餌に対する応答性についてまず検討した。高脂肪食と通常食で飼育したところ、両飼料群で明らかな差は観察されず、通常食で安定的に高TG血症を呈することがわかった。そのため、(2)以降の食餌は通常食が適当であると判断した。 (2) 高TG血症マウス(C3H/S)と対照系統(C3H/C)との交配実験により、F1世代とF2世代(約100匹)の血中TG濃度を測定した。F2世代の高TG血症発症頻度から、原因遺伝子は単一の劣性遺伝子であることを明らかにした。 (3) 近縁なC3H/S 、C3H/C系統間のゲノム中のSNP(一塩基多型)を同定するために、両系統のゲノムのExome解析を次世代シークエンサーにて行い、エクソン領域の塩基配列を比較して、両系統間のSNPの同定を試みた。しかし、精度の高いSNP多型マーカーの選抜には至らなかった。 (4)(3)の結果を受け、高TG血症マウス(C3H/S)とC57BL/6J(B6J)との新たな交配実験系での原因遺伝子探索に取り掛かった。このC3HマウスとB6Jマウスには遺伝的多型が多く存在することが明らかとなっている。そこで、Exome解析による新規SNP同定を行うのではなく、この既存の遺伝多型マーカーを用いた遺伝子型判定と、その後の遺伝解析を行うことにした。現在、交配から得られたF2(約100匹)の血中脂質の測定を終了し、各個体のゲノムDNAを抽出して、遺伝子型判定に着手している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
近縁なC3H/S、C3H/C系統間で原因遺伝子を探索するために、ゲノム中のSNP(一塩基多型)の同定をExome解析により試みた。しかし、Exome解析の精度が低く、SNPの同定ができず、当初予定していた近縁系統間での原因遺伝子探索が困難となった。 そのため、近縁系統間でのF2交雑マウスでの遺伝解析ではなく、すでに遺伝子多型が報告されているC57BL/6Jマウスとの交配を新たに行い、F2交雑マウスを作出することにした。この変更により、大変な時間と労力を要したが、この新たな交配ではSNP多型の同定は必要がないため、その解析にかける時間と労力は削減した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定していた交配群での遺伝解析が困難となったため、新たに交配して作成したF2交雑マウスで解析を行う。血中脂質の表現型については、すでに解析済みであり、今後、約100個体のF2マウスのゲノムDNAを用いた、遺伝子型判定を進める。既に遺伝多型マーカー(マイクロサテライトマーカー)の選抜は終了しており、マウスの各染色体に2~4個ずつの多型マーカーで、高トリグリセリド血症と連関する染色体、また、更に詳細な解析を進めることにより、遺伝子座の存在を明らかにしていく。
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