2016 Fiscal Year Annual Research Report
バキュロウイルスの新規アポトーシス抑制因子APSUPによる宿主域決定機構解析
Project/Area Number |
16H06866
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山田 早人 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (70778258)
|
Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
|
Keywords | アポトーシス / バキュロウイルス / APSUP / 昆虫 / 核多角体病ウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
アポトーシスは昆虫の抗ウイルス応答の1つであり、ウイルスの宿主域決定機構に密接に関わる。これまでに、マイマイガ細胞が種々の核多角体病ウイルス (NPV) 感染に対してアポトーシスを誘導すること、マイマイガ細胞で増殖感染するマイマイガNPV (Lymantria dispar NPV) がアポトーシス抑制因子APSUP (apoptosis suppressor) を持つこと、APSUPがマイマイガのinitiator caspase Ld-Droncの活性型へのプロセシング誘導を抑制して、マイマイガ細胞のアポトーシス誘導を抑制することを明らかにした。今回はAPSUPのアポトーシス抑制機構の詳細を調べるために以下の課題に取り組んだ。 (1) APSUPの機能ドメインの探索 APSUPの機能ドメインと推測された6箇所のアミノ酸領域について、各領域欠損APSUP発現プラスミドを作製した。これらのAPSUP部分欠損体はいずれもLd-Droncの過剰発現により誘導されるマイマイガ細胞のアポトーシスを抑制できなかった。欠損させた全てのアミノ酸領域がアポトーシス抑制機能に関与すること、もしくはアミノ酸領域欠損によるAPSUPタンパク質の立体構造の変化がアポトーシス抑制機能の喪失に関与することが示唆された。 (2) 新たなマイマイガアポトーシス関連因子の単離 マイマイガのアダプター因子相同体Ld-DarkがLd-Droncの活性型へのプロセシング誘導に関わると推測され、Ld-DarkとAPSUPとの相互作用を調べるためにLd-Darkの遺伝子の単離を試みた。得られたLd-Darkの遺伝子の部分配列からは1307アミノ酸残基のタンパク質が推定され、アダプター因子に共通する機能ドメインを保持し、他のチョウ目昆虫における既知のアダプター因子相同体と高い相同性を示すことが確認された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
APSUP部分欠損体を用いて機能ドメインの探索を行う予定であったが、実験に用いた全てのAPSUP部分欠損体がアポトーシス抑制機能を失い、わずか3アミノ酸領域を欠損させたAPSUPにおいてもアポトーシス抑制機能が失われたことから、探索を進めることができなかったため。また、Ld-Droncのプロテアーゼ活性に対するAPSUPの阻害作用については進展がないため。
|
Strategy for Future Research Activity |
Ld-Droncの活性型へのプロセシング誘導に関与するアミノ酸領域とLd-Droncのプロテアーゼ活性に関与するアミノ酸領域について欠損体を作製し、APSUPとの相互作用解析を進める。また、Ld-Droncのプロテアーゼ活性に対するAPSUPの阻害作用解析を進めるとともに、マイマイガのアダプター因子Ld-Darkの遺伝子の全長を単離し、Ld-DarkとAPSUPとの相互作用解析に新たに取り組む。
|