2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H06875
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山口 亮太 京都大学, アフリカ地域研究資料センター, 研究員 (80783422)
|
Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
|
Keywords | 妖術 / 開発 / アフリカ地域研究 / 文化人類学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度は本研究の初年度であり、(1)アフリカにおける開発と妖術についての文献資料の収集、(2)カメルーン共和国の熱帯雨林地域における開発実践の展開についてのフィールド調査、(3)これまでの研究成果の発信を目指した。 (1)については、開発実践に関する人類学的な文献の他に、アフリカにおける開発政策、国際開発論についての概説書などを中心に収集を行った。 (2)については、2017年3月には、カメルーン共和国東南部の熱帯林地域におもむき、ピグミー系狩猟採集民であるバカの生活改善などを目指したNGOの活動を調査した。また、野生動物と環境の保全を目指した国際的な環境保全団体の活動と、地方行政の政策が住民レベルではどのように受け止められているのかを調査した。 (3)については、カメルーン東南部でこれまでに実施してきた妖術に関する研究の一般への公開に重点を置いて行った。5月には、京都大学の学部一年生を対象として妖術や呪術についての概説的な講演を行った。2017年2月には、ウェブマガジン・シノドスにおいて、カメルーン東南部の行政と電力会社、地域住民が関係した妖術問題についての小論を執筆し公表した(http://synodos.jp/international/19177)。本小論は、開発実践が妖術言説の生成と流通にどのような影響を与えるのか、そこに関わるアクターは誰なのかということを論じたという点で、本研究の今後の進展に対して大きな意味を持つ。また、2016年5月の文化人類学会で、カメルーン東南部の農耕民バクエレの妖術についての口頭発表を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年度は本研究の初年度であり、文献資料収集とカメルーンでのフィールド調査を主な課題として設定していた。文献資料収集については、開発実践に関する人類学的研究、アフリカにおける開発政策、国際開発論など、主に開発に関する文献資料を収集することができた。一方で、本研究の対象地域であるカメルーン東南部とコンゴ民主共和国赤道州において開発実践の担い手となるNGOや住民組織のレポートや活動記録などの収集は進んでおらず、2017年度の課題である。 カメルーンでのフィールド調査は、本研究の申請時点では2ヶ月程度を想定していた。しかし、申請後に現在の所属機関に雇用されたこと、2016年度後期に非常勤で講義を担当することになったことから、調査期間を大幅に短縮せざるをえなくなった。しかし、短期間ではあったが、現地でのNGOや国際的な環境保全団体の動向についての最新の情報を得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
2017年度は、16度からの継続として、カメルーン東部州およびコンゴ民主共和国赤道州で展開されてきた開発実践についての、NGOや住民組織の活動記録などの資料収集を目指す。コンゴ民主共和国赤道州の住民の手による手書きの自叙伝の書き起こしと翻訳を通して、対象地域における社会史についての大まかな把握を目指す。 また、コンゴ民主共和国赤道州ルオー学術保護区近隣でのフィールド調査を計画している。調査期間は、2017年8月~9月末までのおよそ2ヶ月と設定し、対象地域における開発の歴史とその担い手についての聞き取りと、現在の地元住民組織が主体となって行いつつある生活改善・向上を目指した取り組みについての観察・聞き取りを行う予定である。また、現地における妖術言説の収集も行う。 研究成果の発信は、2016年度から継続して行う。特に、2017年度は本研究の最終年度に当たるため、一般への公開のみならず、『文化人類学』や『アジア・アフリカ地域研究』などの学術雑誌への投稿を行う
|