2016 Fiscal Year Annual Research Report
「狂気と創造性」の問いをジャック・ラカンの精神分析理論をもとに発展させる試み
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16H06876
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松本 卓也 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (90782566)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 病跡学 / 狂気 / 創造性 / 統合失調症 / 自閉症 / ラカン / ドゥルーズ / ハイデガー |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、マルティン・ハイデガーのヘルダーリン論にみられる狂気と詩作の関係についてラカン派の精神分析理論を用いながら研究し、その成果を研究会で発表した。また、ジル・ドゥルーズにおける狂気と創造性の関係を中心にラカン派の精神分析理論を用いながら研究しその成果を投稿できるようにまとめた。今年度の補助金は、主に上記の研究を遂行するための文献の購入費に当てられた。
1. マルティン・ハイデガーのヘルダーリン論にみられる狂気と詩作の関係については、関西ハイデガー研究会第43回研究会にて発表した。なお、この研究を遂行するにあたって、補助金を用いて実存哲学に関する文献を多数購入した。
2. 交付前の2016年6月26日に筑波大学にて開催された第63回日本病跡学会総会で発表した内容(ジル・ドゥルーズにおける狂気と創造性の関係については、彼の主眼が統合失調症ではなく自閉症スペクトラムにあったと考えることによって晩年の著作『批評と臨床』のパースペクティヴがより明瞭となること)の研究を深め、同内容に関する学術論文を準備した。その他に、ドゥルーズの「器官なき身体」という概念が、対立しているとしばしば目されるラカン派精神分析における言語の原初的形態である「ララング」に実際は近く、作家ジェイムズ・ジョイスの一部の作品がそのような言語によって構成される芸術であることを『早稲田文学』誌1022号で発表した。なお、この研究を遂行するにあたっては、補助金を用いて現代フランス哲学および精神分析と文学に関する文献を多数購入した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マルティン・ハイデガーのヘルダーリン論にみられる狂気と詩作の関係、およびジル・ドゥルーズにおける狂気と創造性の関係を学術論文として発表することが翌年度にずれ込んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
マルティン・ハイデガーのヘルダーリン論にみられる狂気と詩作の関係、およびジル・ドゥルーズにおける狂気と創造性の関係を学術論文として発表し、それと並行して、デカルト、カント、ヘーゲルなどの近代の哲学者における狂気と創造性の問題について精神分析的な観点から研究する。 また、自閉症スペクトラムにおける病理と創造性についての精神分析的理解を論文として発表し、『狂気と創造性』をめぐるモノグラフの全体の執筆を進めていく。
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Research Products
(2 results)