2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H06877
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
河村 瑛子 京都大学, 文学研究科, 助教 (80781947)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 日本文学 / 国文学 / 近世文学 / 俳文学 / 貞門 / 談林 / 芭蕉 / 古俳諧 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、古俳諧資料の研究基盤を整備し、その文学史的位置づけを具体的に解明するとともに、その成果を古典研究へと活用することを目指すものである。 本年度はまず、古俳書解題目録の作成と、全文データの集積を進めた。古俳諧作品を網羅すべく写本の俳書の増補を行い、同時に、古俳書(特に発句集と俳論書類)の写真を収集、それらの通読と原本の調査を経て、書誌・内容の両面にわたる解題を作成した。未翻刻作品については、パソコンで活字翻刻を行い、全文データを蓄積した。この過程で見出した『諸国独吟集』の未紹介伝本から、俳人高梨野也の文事について新見を得、それが芭蕉俳文の解釈と関わることを見出した。このことについて口頭発表を行い(「『俳諧類船集』注釈上の諸問題」2016年12月、京都近世小説研究会)、現在論文化を進めている。 次に、古俳諧の史的研究に供し、かつ俗語資料として重要な、貞享以後の俳諧・雑俳作品について調査を行った。雑俳をも含む目録粗稿の作成に着手し、通読調査を進めた結果、『俳諧類船集』の編者梅盛の没年についての新見を得た(上記口頭発表で言及)。 上記の研究作業で蓄積したデータを駆使して、『俳諧類船集』の注釈的研究を進めた。「かたち」条の注釈研究を『奥の細道』平泉条の精密な解釈や、芭蕉俳文の特質解明に応用した「「かたち」考」(『国語国文』86-5号、印刷中)はその成果の一である。また、『類船集』文章部分の構造とその資料的価値、同書「日南北向」条を端緒とした「ひなたぼっこ」の語義・素材論について研究発表を行った(上記口頭発表)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
古俳書の網羅的調査と解題目録の作成、未翻刻書の活字データ化、古俳書の史的研究、『類船集』の注釈的研究のいずれの工程においても進展があり、研究成果を論文や口頭発表の形で公開することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度と同様の研究作業をさらに進める。特に、古俳書解題目録の完成に注力し、年度中の公開を目指す。また、全文データの蓄積と『類船集』の注釈作業もさらに進め、論文としてその成果を発表したい。発句集は連句集に比べ分量が多く、写真の取り寄せや調査・翻刻に時間を要する場合があるので、それを加味して計画を遂行する必要がある。
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Research Products
(2 results)