2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16H06898
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
植畑 拓也 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 特定助教 (50785970)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | RNA結合タンパク / 免疫細胞 / 炎症制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
RNA結合タンパク(RBP)はRNAの誕生から分解までの運命を決定づける中心的な役割を果たしている。この意味において、RBPはRNA修飾、輸送、翻訳、分解といった様々な段階において遺伝子発現を制御する。本研究の目的は、免疫細胞において炎症応答に深く関連するRBPを同定し、その制御メカニズムを解明することである。これまでの研究により、HeLaやHEK293といった非免疫細胞においてゲノムワイドスケールでRNA interactome解析が行われてきたが、免疫細胞において炎症応答に関連したRBPに関する網羅的な検討は十分ではない。 平成28年度では、これまでにRNA interactome解析で使用されているOligo-d(T) capture法を用いてRBPを網羅的に抽出することによりゲノムワイドにRBPを同定した。この結果、定常状態及び活性化状態を合わせて、Jurkatでは700程度、RAW 264.7では1000以上のRBPを同定することに成功した。さらに、同定されたRBPに関してGO解析を行うと、実際にRNA結合機能の他、ヘリケース活性やリボソーム構成要素など様々なRNA代謝に関連したタンパクが豊富に含まれていることがわかった。さらに定常状態と比較して活性化状態で特にRNA-RBP結合が認められる遺伝子群の存在を確認した。興味深いことに、活性化状態におけるRBP群には、炎症制御に重要でありmRNA分解に関与する遺伝子(Zc3h12a)が含まれていることがわかった。このことは、活性化状態におけるRNA interactomeには炎症制御に深く関連したタンパクが集積している可能性を示唆している。実際に、免疫制御の観点において機能が明らかではない遺伝子が含まれていた。今後、これらの遺伝子に着目し免疫細胞における機能及び個体レベルでの役割を明らかにすることで、新しいRNA制御機構の解明に繋がることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度において、RNA interactome解析を行い網羅的にRBPの同定を行った。具体的には、JurkatあるいはRAW264.7を用いて、定常状態及び活性化状態においてOligo-d(T) capture法によりmRNAに結合するタンパクを抽出した。この段階で、これらのサンプルに対して銀染色を行い、UVクリスリンク依存的にタンパクが抽出されていることを確認した。次に、質量分析によって同定されたタンパクに関して、非特異的結合や外来タンパクのコンタミネーションを除外した結果、刺激前後合わせてjurkatでは700程度、RAW264.7では1000程度のRBPを同定した。次にduplicateで行ったjurkatのRBPデータに関して高い再現性が得られたため詳細な解析を行ったところ、刺激前後において有意差のある324のRBPが検出された。これらRBPに関してCluster解析を行った結果、4つのClusterに分類された。Cluster 1には活性化状態において特にRNA結合が誘導される17のRBPが分類された。Cluster 1に関してGO解析を行うと、このClusterにはRNA代謝、スプライシング、輸送に関連するタンパクが含まれており、実際、炎症制御に重要な役割がありRNA分解に関与する遺伝子(Zc3h12a)が含まれていた。本研究において初めて、実際の細胞内でZc3h12aがRNAに結合すること証明した。Cluster 1の他にも、同様の挙動を示すCluster 3もまた炎症制御に関連すると考えられる遺伝子が含まれていた。一方、324のRBP以外にも、RBPの遺伝子発現自体が誘導されるものもまた免疫機能制御に関連する可能性があり、今後の解析による新たなRNA制御機構解明が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に得られたRBPomeデータを活用して、定常状態と比較して活性化状態においてRNA-RBP結合が誘導された遺伝子に着目する。実際に、この中にはこれまでに炎症制御に強く関連しRNA分解に関与するZc3h12aが含まれている。他にもZc3h12aと同様に、特に活性化状態においてRNAとの結合が増加するRBPがあり、免疫細胞における何らかの活性化に関与していることが示唆される。また同時に、活性化によるRNA-RBP結合の有意な増加はないものの、RBPの発現量自体が活性化によって誘導される遺伝子にも焦点を当てる。これらの候補遺伝子に対してHeLa細胞等を用いてsiRNAによるノックダウンを行い、様々な刺激による炎症応答を評価する。このような2次的スクリーニングにより、すでにいくつかの遺伝子に関して、炎症制御に関与すると考えられるRBPを見出している。これらのRBPに関して、個体レベルでの解析を可能にするため、CRISPR-Cas9システムを用いてノックアウトマウスの作製を行う。 一方、このような方策で同定できない免疫学的に重要なRBPも存在すると考えられる。これまでにもRBPにはリンパ球分化に深く関連したものが存在することが知られている。JurkatにおけるRBPomeの中には、これまでHeLaやHEK293などで同定されていないT細胞特異的なRBPも含まれている。このため、このようなRBPに対してCRISPR-Cas9システムを用いて、in vitroでのリンパ球分化誘導システムによって標的RBPにおける細胞分化への影響を評価する。これらの結果に基づいて、個体レベルにおけるリンパ球分化を評価するため、ノックアウトマウスの作製を試みる。
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