2016 Fiscal Year Annual Research Report
日本の木造建築における『洗い』と『古色塗り』―表層処理技術からみた美意識の変遷―
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16H06911
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
中山 利恵 京都工芸繊維大学, グローバルエクセレンス, 助教 (30770185)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 洗い / 古色塗り / 表層処理技術 / 木肌削り出し / 古材転用 / 経年 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は木造建築の表層処理技術の文献資料調査と実態(聞き取り・技術検証)調査を行った。 文献資料調査においては、表層処理技術に関する痕跡や記録の追加調査として国宝・重要文化財建造物修理工事報告書調査の記録調査を進め、「古色塗り」「色付け」等古びを志向する表層処理を中心とした記録の検索を行った。また、数奇屋建築関係・茶道関係史料において「色付け」や経年美に関する記述の検索と収集を行った。 さらに、皇室関係建築の「洗い」について洗い職人への聞き取り調査を行うとともに、宮内公文書館所蔵文書の修理記録調査を行い、近代における宮内庁所管の国有財産建造物について一定の史料を収集できた。近代において文化財建造物修理工事報告書等に「洗い」の記録が残される事は極めて少なく、近代の技術や施工実態を分析する上で重要な記録を得る事ができた。 また2013年度式年遷宮豊受大神宮棟持柱古材転用の実態調査においては、古材転用の歴史的背景について追加調査を行い、近現代の伊勢神宮宇治橋鳥居・亀山市関宿の関の追分鳥居・神戸市生田神社の鳥居の造替に関する資料を、情報が少ない中可能な範囲で収集する事ができた。これによる成果は、EAAC 2017 : International Conference on East Asian Architectural Culture において”Survey on the Actual Conditions of Wood Processing for the Reuse of Ise Grand Shrine’s Old Materials”と題して発表予定である。(2017年5月10日採択決定)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に調査を進めており、史料収集や論文執筆において一定の成果を挙げる事ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度に計画していた「色付け」「古色塗り」遺構の色彩計量調査においては、保存科学等の専門家の助言を受けながら計画を進めている。このため、調査可能な物件から確実に実績を積み重ねデータを増やしていくという方針が適当と考えられる。これには、実績を示すことで次の調査対象建造物所有者からの信用を得られやすいというメリットもある。以上の事から、2017年度における色彩計量調査は、対象物件をある程度絞り精度のある調査を推進していく予定である。
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