2016 Fiscal Year Annual Research Report
High performance membranes for water purification prepared from bio-based materials
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16H06912
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
清水 美智子 京都工芸繊維大学, グローバルエクセレンス, 助教 (30759965)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | ナノセルロース / 水処理 / 複合材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、酢酸セルロース基材にセルロースナノファイバーを補強材として混合することで、高透水性かつ高強度を両立した新規水処理膜を作製することを目的としている。 本年度はセルロースナノファイバーを混合した酢酸セルロース膜の作製条件について検討し、水処理膜の特性を評価した。膜強度と透水量の増加を両立させるためには、疎水性である酢酸セルロース中において親水性のセルロースナノファイバーが十分に分散することが必須である。そのため、まず酢酸セルロースとの親和性を向上させるため、疎水的なアルキル鎖を有する4級アンモニウムイオンを用いて表面改質を行ったセルロースナノファイバーを作製した。有機溶媒中で分散したセルロースナノファイバー分散液を調製し、酢酸セルロース溶液と混合した。セルロースナノファイバーと酢酸セルロースの混合溶液から、キャスト浸漬法により複合平膜を作製した。得られた複合平膜は、卓上クロスフロー型平膜評価装置を用いて透水性能と分離性能について評価した。様々な塩やタンパク質粒子を用いて透水試験を行った結果、作製した混合膜の限外ろ過膜としての透水性能や分離性能については大きな違いはみられないことが判明した。走査型電子顕微鏡を用いて複合平膜の断面を観察した結果、ナノファイバーの凝集は観察されなかった。また、平膜断面の多孔質構造においても、ナノファイバー添加による大きな影響は見られなかった。得られた平膜に対して引張試験を行ったところ、機械特性については引張弾性率、引張強度、破壊仕事の項目において向上が認められた。このように、ナノファイバーが凝集せず酢酸セルロース中で均一に分散することから、膜性能を維持したまま強度の向上が見込めることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、酢酸セルロース基材にセルロースナノファイバーを補強材として混合することで、高透水性かつ高強度を両立した新規水処理膜を作製することを目的としている。本年度は、ナノファイバー複合膜の作製条件の検討と、透水性能や構造特性、機械特性について評価した。一般的に、親水性のセルロースナノファイバーを凝集無く疎水性高分子材料と複合化させることは難しいが、本研究では表面疎水性である4級アンモニウムイオンを有するセルロースナノファイバーを用いることで、疎水性の酢酸セルロースとの複合化に成功している。研究計画では複合膜の作製と透水性、構造特性の評価に加えてセルロースナノファイバーと酢酸セルロースとの相互作用の評価について行う予定であったが、進行状況を考慮し、複合膜の機械特性評価について前倒しで行った。セルロースナノファイバーと酢酸セルロース間における相互作用の評価については次年度行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、セルロースナノファイバー複合化水処理膜の作製と評価について手法を確立させたといえる。次年度は、さらに作製手法のパラメータについて詳細な検討を行っていくことで、調製条件と膜特性の関係をより詳細に解明することを目指す。さらに、セルロースナノファイバーが凝集無く疎水性高分子中で分散するためには、高分子との親和性が重要なパラメーターとなる。複合化前に両成分の親和性が評価可能であれば、効率的に複合材料の設計が行える可能性がある。そのため、酢酸セルロースとセルロースナノファイバー間における相互作用の評価について、核磁気共鳴法や原子間力顕微鏡を用いた手法を検討し、評価方法の確立を目指す。
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