2017 Fiscal Year Annual Research Report
A Coexistence of the Atman-Brahman Concepts in the Pali Canon
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16H06919
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
名和 隆乾 大阪大学, 文学研究科, 助教 (20782741)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 初期仏教 / パーリ聖典 / 梵我一如 / brahman / ブラフマー神 / 四無量心 / 慈悲喜捨 / ブラフマニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
紀元前6世紀頃のインド文化を伝える古ウパニシャッド文献によれば,当時のバラモンは,最高原理ブラフマンと,アートマン(個々人に備わる霊魂的存在)との合一を究極的境地として目指す,いわゆる梵我一如思想を信奉していたという.その後,紀元前4-5世紀頃に仏教が現れるが,その頃の様子を伝えるインド初期仏典に,前述の梵我一如思想の痕跡を見る事が出来る.しかしその内容は古ウパニシャッド文献とは若干異なり,バラモンは最高神ブラフマーという人格神になる事を目指していた事になっている.しかもその合一方法は,四無量心(慈悲喜捨の無限の拡散)という,仏教以前または同時代の文献には確認されない修行実践とされている. 一方,インド初期仏典には,当時の仏教徒が再定義した梵我一如思想も現れている.即ち仏教徒は,彼らにとっての究極的境地である涅槃を,古代インドの伝統で究極的存在の名であった梵と称し,そこへ自身(我)が到達する事を梵我一如と呼んだのである. 以上の如くインド初期仏典には,バラモンにとっての究極的境地であるブラフマー神になるという梵我一如と,仏教徒が再定義した涅槃への到達という梵我一如との,2つの梵我一如が存在する.更にこの2つの梵我一如の関係を見ると,仏教徒による異教の巧みな取り込みを指摘出来る.即ち仏教徒は,バラモンが主張した,ブラフマー神への四無量心による到達方法を,全くその通りに是認し,仏教の修業段階中の高位に位置づけた.しかしブラフマー神も輪廻に囚われた存在でしかなく,輪廻を脱した涅槃こそが真の究極的境地であり,そこへと到達する修行を説いたのがブッダであると主張したのである.ここからは,異教の思想を全く否定する事なしに自身を優位性を保とうとする立場を指摘する事が出来る.また本研究課題の遂行中,四無量心の起源について見通しを得ることが出来た.そこで,その詳細の解明を次なる課題としたい.
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Research Progress Status |
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(6 results)