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2016 Fiscal Year Annual Research Report

The Reception of High Tang Poetry in Classical Chinese Poems by Muro Kyuso

Research Project

Project/Area Number 16H06921
Research InstitutionOsaka University

Principal Investigator

山本 嘉孝  大阪大学, 文学研究科, 講師 (40783626)

Project Period (FY) 2016-08-26 – 2018-03-31
Keywords日本漢詩 / 日本近世文学 / 辺塞詩 / 室鳩巣 / 木下順庵 / 盛唐詩 / 杜甫 / 詩史
Outline of Annual Research Achievements

平成28年度は、青年・壮年期の室鳩巣の漢詩における盛唐詩受容を検討し、『唐詩訓解』が同時期の鳩巣の作詩に用いられた形跡を確認した。
特に宝永3年(1706)に制作された五言律詩の連作「古題拾五首」(東京都立中央図書館加賀文庫蔵写本『秋興八首雑題拾五首』、及び刊本『鳩巣先生文集』前編巻五所収)を分析したところ、『唐詩訓解』からそのまま借用されたと考えられる詩語が半数を超えることが判明した。
同連作所収の辺塞詩二首に焦点を当て、口頭発表を行い、論文を執筆した(掲載確定)。杜甫の辺塞詩と杜甫・李白の楽府題詩をめぐる『唐詩訓解』注、並びに新井白石の批評を参照し、鳩巣の辺塞詩が、時事を詩に詠み込んだ「詩史」としての杜甫を意識して作られた可能性を指摘した。詩の制作年を鑑みると、鳩巣が自著『赤穂義人録』の改稿を目論んでいた時期に当たり、辺境の地で忠節を尽くす漢代の兵士を詠んだ鳩巣の辺塞詩に、時事(赤穂事件)が託されている可能性が指摘できる、との読解を行った。
以上の考察を踏まえ、鳩巣の師であった木下順庵と青年・壮年期の鳩巣が、漢代の忠臣蘇武を詠んだ詠史詩の延長線上に盛唐の辺塞詩を受容したこと、またその理論的基盤として『唐詩訓解』注、及び『詩人玉屑』所収の北宋の詩論が摂取されていたことを明らかにし、彼らが辺塞詩の歴史性や時事性を否定した祇園南海や荻生徂徠門下とは異なる形で盛唐詩を受容していた、と結論づけた。
加えて、鳩巣と同門の祇園南海が当世日本を題材に詠んだ盛唐詩風の詩を取り上げて口頭発表を行い、盛唐詩受容が実は「俗」(=当世日本)の肯定と密接に関連していたことを明らかにした。樫田北岸の袁宏道受容についても論文を執筆し(掲載確定)、盛唐詩風の作詩への反発についても新たな知見を得た。並びに、明治天皇の和歌の英訳と日露戦争の関係についても調査し、詩歌と時事の関係について論文を執筆した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

平成28年度は、青年・壮年期の室鳩巣の詩における盛唐詩受容について、『鳩巣先生文集』前編を対象として検討した。詩語の包括的な考察はまだ途上ではあるが、(1)詩語の分析を通して、『唐詩訓解』が鳩巣の作詩に用いられたことを確認し、(2)鳩巣の用いた詩語と『唐詩訓解』注、及び『詩人玉屑』における盛唐詩の解釈を照合した結果、鳩巣による盛唐詩理解の根底に、北宋の詩論があったことが明らかにできた。
加えて、同門の祇園南海における盛唐詩受容についても理解を深めることで、同じ木下順庵門下であっても、盛唐詩受容の形には差異も存在していたことが明らかとなり、同時代における鳩巣の位置づけを行うためのヒントを得ることができた。
また時代や文脈は異なるが、明治天皇の和歌の英訳について調査し、論文にまとめることによって、18世紀~20世紀初頭の日本における詩歌表現と時事の関連性について、広く考察することができた。

Strategy for Future Research Activity

平成29年度には、晩年期(江戸在住期)の室鳩巣の詩における盛唐詩受容について、『鳩巣先生文集』後編を対象に検討する計画である。特に正徳3年(1713)の中秋詩を取り上げ、鳩巣、また新井白石と益田鶴楼が、盛唐以前の詩人に自らをなぞらえた様相について、口頭発表を行うことが確定している。その結果を踏まえ、青年・壮年期の鳩巣による盛唐詩受容との共通点・相違点について整理を行う予定である。
また28年度に行った研究により、鳩巣の盛唐詩受容が宋代(北宋)の詩論を介してなされていたことが明らかになったため、29年度は、鳩巣による宋詩受容と盛唐詩受容の関連について検討することとする。具体的には、蘇軾に倣って鳩巣が制作した和陶詩(陶淵明の詩の和韻)について考察し、論文を執筆する予定である。
加えて、鳩巣の門人の中村蘭林における時事と和歌の関係についても論文を執筆する予定である。よって29年度は、盛唐詩受容と和歌の関連性についても検討する計画である。

  • Research Products

    (8 results)

All 2017 2016

All Journal Article (5 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (3 results) (of which Int'l Joint Research: 2 results,  Invited: 1 results)

  • [Journal Article] 室鳩巣の辺塞詩 ― 盛唐詩の模倣と忠臣像の造形2017

    • Author(s)
      山本嘉孝
    • Journal Title

      語文

      Volume: 108 Pages: 37-50

  • [Journal Article] 樫田北岸の「瓶話」 ― 袁宏道受容における挿花と禅2017

    • Author(s)
      山本嘉孝
    • Journal Title

      雅俗

      Volume: 16 Pages: 2-17

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] 和歌英訳と詩形 ― Imperial Songs (1904)における翻訳者の責務2017

    • Author(s)
      山本嘉孝
    • Journal Title

      日本の言語文化の国際的発信方法の開発 ― 和歌(短歌)の外国語翻訳を通して

      Volume: 2016年度 Pages: 21-29

  • [Journal Article] 書評 高山大毅著『近世日本の「礼楽」と「修辞」 ― 荻生徂徠以降の「接人」の制度構想』2017

    • Author(s)
      山本嘉孝
    • Journal Title

      和漢比較文学

      Volume: 58 Pages: 64-72

  • [Journal Article] 書評 末木恭彦著『徂徠と崑崙』2016

    • Author(s)
      山本嘉孝
    • Journal Title

      日本思想史学

      Volume: 48 Pages: 202-207

  • [Presentation] Sailors' Wives and Palace Laments: Depictions of Japanese Women in Gion Nankai’s Kanshi2017

    • Author(s)
      山本嘉孝
    • Organizer
      Early Modern Japan Network, Association for Asian Studies (AAS)
    • Place of Presentation
      Sheraton Centre Toronto Hotel
    • Year and Date
      2017-03-18 – 2017-03-18
    • Int'l Joint Research
  • [Presentation] 室鳩巣の辺塞詩2017

    • Author(s)
      山本嘉孝
    • Organizer
      平成29年度大阪大学国語国文学会
    • Place of Presentation
      大阪大学
    • Year and Date
      2017-01-07 – 2017-01-07
    • Invited
  • [Presentation] Prosody as Medium: The Translator’s Task in Imperial Songs (1904)2016

    • Author(s)
      山本嘉孝
    • Organizer
      Japan in the World, the World in Japan: A Methodological Approach
    • Place of Presentation
      大手前大学
    • Year and Date
      2016-12-04 – 2016-12-04
    • Int'l Joint Research

URL: 

Published: 2018-01-16  

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