2016 Fiscal Year Annual Research Report
CKAP4のエクソソームへの輸送機構と生理的意義の解明
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16H06944
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木村 公一 大阪大学, 医学系研究科, 特任助教(常勤) (60595370)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | エクソソーム / CKAP4 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞膜上のCKAP4の発現量とエクソソーム中のCKAP4の発現量に相関があるか否かを評価した。ヒト由来の膵癌細胞株3種類、大腸癌細胞株4種類、胃癌細胞株5種類、肝癌細胞株3種類の合計15種の細胞株において、細胞膜上CKAP4の発現量とエクソソーム中CKAP4の発現量をウェスタンブロットにて確認した。コントロールとして膵癌細胞株S2-CP8細胞を用いた。S2-CP8細胞の細胞膜上CKAP4およびエクソソーム中のCKAP4のband intensityをそれぞれ1とし、他の14種類の細胞株におけるband intensityを定量し、細胞膜上CKAP4とエクソソーム中のCKAP4の相関係数を算出した。R = 0.54で正の相関を認めており、相関が非常に強いとはいえないが、細胞膜上CKAP4の発現が高ければ、エクソソーム中CKAP4の発現量が高くなるという傾向を認めた。癌種別では、検索した範囲内では、膵癌細胞株および肝癌細胞株のエクソソーム中CKAP4の発現はいずれの細胞株においても高いという結果であった。 ついで、エクソソームの精製方法により、上述の細胞種ごとのエクソソーム中CKAP4の発現量の傾向に差異が生じないか否かを3種類の細胞株を用いて検討した。培養上清を遠心後、100 k gにて超遠心したpelletをエクソソーム分画とする方法、およびエクソソーム膜表面に存在するホスファチジルセリンに対するアフィニティー法であるMagCaptureTM Exosome Isolation Kit PSを使用した方法の2種類の方法を用いた。細胞株ごとのエクソソーム中CKAP4の発現量に関して、2種類の方法で同様の傾向を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二年間の研究期間のうち、初年度は、複数種類の細胞株の細胞膜上CKAP4およびエクソソーム中CKAP4の発現量を定量することで、細胞膜上CKAP4の発現が高ければ、エクソソーム中CKAP4の発現量が高くなる傾向を認めるということを確認できた。また、すでに癌細胞株特異的にエクソソーム中にCKAP4が発現することを確認している。以上の結果は、癌患者血清でCKAP4高値が認められれば、腫瘍部の細胞膜上にCKAP4が高発現する可能性を示唆する結果である。 ついで、細胞株ごとのエクソソーム中CKAP4の発現量が異なるという傾向が、2種類のエクソソームの精製方法(培養上清を遠心後、100 k gにて超遠心したpelletをエクソソーム分画とする方法、およびエクソソーム膜表面に存在するホスファチジルセリンに対するアフィニティー法であるMagCaptureTM Exosome Isolation Kit PSを使用した方法)で、同様の結果となることが確認できた。。 また、ヒト膵癌細胞株S2-CP8細胞のDKK1ノックアウト細胞およびそれに対するレスキュー細胞を樹立した。今後DKK1の発現とCKAP4のエクソソームへの分泌に相関があるか否かの解析が可能となった。 以上より、当初の計画通りではないものの、エクソソーム中へのCKAP4の分泌機能の解明へ向けた端緒となる知見を見出しており、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の計画を継続しながら、得られた研究成果を基に以下の解析を行っていく。 1)CKAP4のエクソソームへの分泌に細胞膜上CKAP4のエンドサイトーシスが関与するか否かを、S2-CP8細胞のDKK1ノックアウト細胞およびそのレスキュー細胞を用いて検討する。さらにクラスリンノックダウン細胞でも検討する。また、エクソソーム中への分泌に関与すると報告されているCD9、CD63、CD81、TSG101などの既知の因子のノックダウンがCKAP4のエクソソーム中への分泌に関与するか否かを検討する。 2)エクソソーム中のCKAP4に生理活性があるか否かを解析する。S2-CP8細胞の野生株とCKAP4ノックアウト株を用いて、野生株のエクソソーム(CKAP4存在エクソソーム)とCKAP4ノックアウト株のエクソソーム(CKAP4非存在エクソソーム)をMagCaptureTM Exosome Isolation Kit PSを用いて精製する。精製したエクソソームによりCKAP4ノックアウト株を刺激することで、CKAP4存在エクソソームが有意に遊走能(トランスウェルを用いたアッセイ)、浸潤能(マトリゲルコートされたトランスウェルフィルターを用いたアッセイ)、及び増殖能を亢進しないか否かを検討する。 培養細胞において、CKAP4存在エクソソームに生理的意義が見いだせれば、ヌードマウスでの腫瘍形成及び転移に影響があるか否かを解明する。具体的には、S2-CP8細胞のCKAP4存在エクソソームおよびCKAP4非存在エクソソームを4週間2日毎にヌードマウスに静注する。S2-CP8細胞のCKAP4ノックアウト株を腹腔内投与し、CKAP4存在エクソソーム投与が腹膜播種に対して影響するのか否かを確認する。
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