2016 Fiscal Year Annual Research Report
タイの臨床現場において優勢なカルバペネム耐性菌株の特性
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16H06946
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
菅原 庸 大阪大学, 微生物病研究所, 特任助教(常勤) (70452464)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 薬剤耐性菌 / カルバペネム / 腸内細菌科細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)は、使用可能なほぼ全ての抗菌薬に対して耐性をもち、臨床現場での蔓延が世界で大きな問題となっている。これまでに世界各地におけるCREの分子疫学調査結果から、CREの中でも特定の系統が特定の国や地域で優勢に伝播拡大している例が報告されているが、そのような系統が優勢になる根拠についてはほとんど明らかにされていない。本研究は、CRE臨床株の分子疫学的調査結果や全ゲノム配列データを用いて、臨床現場において優勢な系統が特異的に有している性状を明らかにすることを目的としている。平成28年度は、タイ各地の病院から得られた株に加えてミャンマー由来の株についても解析を行った。 カルバペネムに対する耐性化のメカニズムの主なものとしては、カルバペネムを分解する酵素であるカルバペネマーゼの産生があげられる。世界的に広まっているカルバペネマーゼはいくつかのタイプが存在し、それらはプラスミドにコードされている。得られたCRE株について、カルバペネマーゼとカルバペネマーゼがコードされているプラスミドのタイプ、また菌のタイプに着目し、菌株が分離された箇所において分離数の多い、蔓延していると見られる系統(優勢株)と、偶発的にカルバペネマーゼを獲得した系統(非優勢株)をそれぞれ複数選定した。その結果、優勢株において、同じ株間で同じカルバペネマーゼ搭載プラスミドを共有している場合と、異なるプラスミドを持つ場合があることが明らかとなった。同じ様に優勢になっているように見られる株であっても、異なる性状を持つことが予想された。また、選定した株間の特性について、増殖やプラスミドの伝達性、ムチン糖鎖への結合能等の比較解析を行うための実験系の構築を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初想定していた株数を超えるCRE株が得られたため、その解析に時間がかかり、蔓延株・非蔓延株間の遺伝的差異を抽出するまでには至っていない。また、研究実施計画では、蔓延しているCRE株の性状解析を行う予定であったが、複数の条件化での増殖性やプラスミドの伝達性、ムチン糖鎖への結合能等の比較解析を行うための実験系の構築にとどまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、CREの優勢株・非優勢株の遺伝的及び機能的差異を見出すことを優先して行う。平成28年度に選定したそれぞれの菌株間で、ゲノムの比較解析を行うことと平行して、各々の株の性状について、平成28年度に構築した実験系を用いて比較解析を行う。
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