2016 Fiscal Year Annual Research Report
歯周組織老化におけるmicroRNA-34aの機能解析
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16H06962
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
池上 久仁子 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (80779116)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 歯学 / 老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯周病は、加齢に伴い疾患罹患率並びに重篤度が増加する慢性炎症性疾患であり、加齢が同疾患の重要なリスク因子の一つであることが疫学的に証明されています。現在、加齢に伴い臓器の機能が低下し、老化現象が進行する原因の一つとして、細胞レベルでの老化、“細胞老化”説が考えられています。しかしながら、歯周病における老化細胞の役割は未だ十分に解明されていません。我々の研究室ではこれまでに、老化歯根膜細胞が炎症性サイトカインの高産生(SASP現象)することで、細胞老化が歯周組織の加齢に伴う機能低下に関与することを報告しています。本研究においては、歯周組織構成細胞のなかでとりわけ歯根膜細胞に注目し、解析を行いました。歯根膜細胞は豊富な細胞外基質タンパク(ECM)を産生することで歯根膜の生理的特性を担うのみならず、骨芽細胞、セメント芽細胞へ分化する能力を維持することで、硬組織代謝を担う幹細胞性を有し、歯周組織再生の鍵となる細胞です。そこで、歯根膜細胞の老化が高齢者の歯周組織に特徴的な幹細胞性の喪失と治癒の遷延機構に関与するとの仮説のもと、研究を遂行しました。 本年度は、歯周組織の老化過程をin vitroモデルにて構築し、実際の老化歯根膜細胞における幹細胞性を評価しました。また細胞老化の過程で発現上昇するmiRNAの一つであるmiR-34aが、ヒト歯根膜細胞の老化過程において、いかなる分子メカニズムで幹細胞能を制御しているかを細胞、分子レベルで解明にあたりました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、miR-34aがヒト歯根膜細胞の老化過程において、いかなる分子メカニズムで幹細胞能を制御しているかを細胞、分子レベルで解明にあたりました。初代ヒト歯根膜細胞(HPDLs, Scien cell 社)継代培養を繰り返し、複製老化を誘導しました。p16,p21等の細胞周期制御タンパクの発現ならびにSA-beta Gal活性の増強を確認することで、老化歯根膜細胞への誘導を確認しました。また継代数の異なる細胞における幹細胞の割合を、幹細胞の表面抗原マーカーの一つであるSSEA3の抗体を用いてFCM解析にて比較検討しました。 miR-34aの標的遺伝子であるSIRT1の発現に関しては、タンパク発現をwestern blotting法と細胞免疫染色法にて、遺伝子発現をリアルタイムPCR法にて解析しました。またmiR-34a(hsa-miR-34a)のRNA配列を模倣して人工合成したmicroRNA (mimic miRNA)あるいは、相補配列で阻害作用をもつmicroRNA 阻害剤(inhibitor miRNA):mirVana社;を老化歯根膜細胞、正常歯根膜細胞に遺伝子導入し、その生理的役割を検討しました。具体的には、細胞周期調節に関わる因子であるSIRT1のタンパク発現をwestern blotting法にて、遺伝子発現をリアルタイムPCR法にて解析しました。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度から継続しmiR-34aのヒト歯根膜細胞における幹細胞能の解析を行います。次に細菌性刺激、活性酸素種、メカニカルストレスなどの老化誘導ストレスが、歯根膜細胞におけるmiR-34a機能をどのように調節制御しているかを解析、検討します。具体的には正常ヒト歯根膜細胞あるいは老化ヒト歯根膜細胞をPorphyromonas gingivalis( P.g.)由来LPSで刺激し、miR-34aの発現ならびに細胞周期調節タンパクの発現変動を解析します。正常ヒト歯根膜細胞あるいは老化ヒト歯根膜細胞に酸化ストレス(H2O2)あるいは抗酸化剤(N-acetylcysteine:NAC)にて刺激した後のmiR-34aの発現変動ならびにCDK2/6の発現変動を解析します。正常ヒト歯根膜細胞あるいは老化ヒト歯根膜細胞をストレッチチャンバー(メニコン社)に播種し、細胞伸展器shellpa(メニコン)で24時間伸展刺激を加えた後のmiR-34aの発現変動ならびにCDK4/6の発現変動を解析します。 次にin vivo歯周病モデルを用いて、歯周組織老化おけるmiR-34aの生理作用を解析、検討します。生体での歯周組織の老化と幹細胞能におけるmiR-34aの機能を検討する為に、老齢マウスのP.g.感染歯周炎モデルにおいて、老化歯根膜細胞、幹細胞の動態を検討します。老齢野生型マウス(C57/BL6)の歯周組織に P.g.菌を感染、絹糸を結紮することでマウス歯周炎モデルを構築します。顎骨のmicro CT計測後に、歯周組織切片を作製し、HE染色、老化マーカーであるSA-beta GAL、P16/INK4aと幹細胞マーカーであるSSEA1、CD105を用いた免疫組織学的解析する事で、老化歯根膜における幹細胞の動態を検討します。
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Research Products
(4 results)