2016 Fiscal Year Annual Research Report
転写因子KLF15による骨格筋と肝臓の臓器相関を介した代謝制御に関する研究
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16H06970
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
岡田 裕子 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (90782433)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | エネルギー代謝 / 骨格筋 / 糖尿病 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨格筋特異的KLF15遺伝子欠損マウスにおいて糖代謝の変化を検討したところ、長時間絶食条件では優位な血糖の低下をみたものの、定常状態では耐糖能に大きな変化はないことが明らかとなった。また、骨格筋のタンパク分解やアミノ酸異化に関わる酵素・分子の遺伝子発現変化も定常状態では野生型と比べ耐糖能に大きな差はなかった。 野生型マウスに運動負荷(15m/minのトレッドミル負荷)を与えたところ、KLF15とともにタンパク分解やアミノ酸異化に関わる酵素・分子の遺伝子発現が上昇し、STZを用いてインスリン欠乏性糖尿病を誘導したマウスでは骨格筋でのKLF15とともにタンパク分解やアミノ酸異化に関わる酵素・分子の遺伝子発現が上昇した。このような条件下でのタンパク分解やアミノ酸異化に関わる酵素・分子の遺伝子発現上昇は、骨格筋特異的KLF15欠損マウスでは顕著に抑制されることが明らかとなり、KLF15は糖尿病状態や長期絶食状態、運動時などにおける骨格筋の蛋白分解の重要な制御因子であることが明らかとなった。実際、骨格筋特異的KLF15遺伝子欠損マウスは特定の条件下で、骨格筋のタンパク分解の抑制により、骨格筋の萎縮が抑制されることも明らかとなった。 一方、骨格筋特異的KLF15遺伝子欠損マウスに運動負荷を与えた際、またSTZを用いてインスリン欠乏性糖尿病を誘導した際にも、血糖自体は野生型マウスと優位な差はなかった。このことから、これらの条件下では血糖維持については十分な代償機構が働くことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今までの研究成果により、KLF15が糖尿病状態や長期絶食状態、運動時などにおける骨格筋のタンパク分解の重要な制御因子であることも明らかとなった。これにより本計画で明らかにすべき仮説の一つが証明されたといえ、この点で研究は順調に進んでいるといえる。一方、骨格筋特異的KLF15欠損マウスは、長期絶食時には野生型マウスと比べ有意なけ低血糖を示したものの、糖尿病状態や運動時では野生型に比べて有意な血糖の低下を認めなかった。この点は研究開始時の予想とは異なったため、当初計画していた実験のいくつかは予定通り行われなかった。一方、この結果から血糖維持に関する代償機構のメカニズムについての解析や骨格筋萎縮抑制のメカニズムの解析など当初予想していなかった新知見が得られ、この点では当初の予想を超える展開があったといえる。このような点も踏まえると、研究全体でみれば、計画は概ね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本計画ではKLF15の糖尿病状態や長期絶食状態、運動時などにおける骨格筋のタンパク分解の重要な制御因子であることも明らかとなった。これにより、本計画で明らかにすべき仮説の一つが証明されたといえる。一方、長期絶食状態以外では血糖に有意な変化はなかったことから、血糖維持については代償機構が働いていると考えられる。そこで、今後は、この代償機構のメカニズムについても検討を進める。特に、糖尿病状態や絶食時の骨格筋のタンパク分解やそれに伴うアミノ酸代謝の変化とグルカゴン分泌制御機構の関連については詳細な検討を行う。また、骨格筋特異的KLF15遺伝子欠損マウスでは骨格筋のタンパク分解の抑制により、骨格筋の萎縮が抑制されることも明らかとなった。そこで、今後はKLF15と骨格筋の萎縮の発症病理の詳細についても検討を進めてゆく。
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Research Products
(4 results)