2016 Fiscal Year Annual Research Report
天然素材と皮膚の界面における物質の挙動の表面分析を用いた研究
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16H06979
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
佐野 奈緒子 奈良女子大学, 生活環境科学系, 准教授 (30781851)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 有害物質の布への吸着割合 / 体内有害物質の排出 |
Outline of Annual Research Achievements |
食物や環境中に存在する人体に有害とされる重金属および有機化学物質が人体に蓄積されることによる健康被害については報告されており、その軽減のため環境を中心に社会的に改善されてはいるが、日々の生活によるこれらの有害物質の人体への蓄積は微量ながらも存在する。また有害物質の蓄積による健康被害を軽減および健康を維持するために様々な薬品や補助製品が研究・開発されているが、多くは煩雑であったり意図して摂取するものである。そこで社会的生活を送るにあたり必須である被服に着目し、被服機能を最大限に引き出すことで将来的に「着るだけで健康促進になる」ことを目指して、本研究においてその基盤となる汎用素材布における物質の挙動研究を遂行することを目的とした。本年度は鉛とビスフェノールAを用いて研究を進めた。得られた結果を以下に示す。
通常文化的生活を送る社会で平均的な重ね着の枚数2~4枚を想定して、汎用布4層に重金属および有害有機化学物質を含んだものをそれぞれ疑似汗として着目物質の肌から布の層中の移動の観察を行った。模擬汗中の鉛の挙動をみたところ、同種の素材布層よりも異なる素材の布を交互に重ねた4層のサンプルから、より高濃度の鉛が一番肌から遠い上層布で検出された。ビスフェノールAにおいては水溶液(汗)中への溶解度が低く疑似汗が作成できなかったため、着目対象を汗から皮脂に変更を行い実験を行ったところ、着目物質の挙動は重金属含有模擬汗とは逆の結果が得られた。この現象は皮脂が布に浸透する際に皮脂が展開溶媒の働きをし、着目有機物質が上層布まで一緒に移動したものと示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本課題は28年度9月末に採択された為、やや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
ビスフェノールAが最外層に濃度が高く存在するという興味深い結果を受け、この挙動のさらなる理解および着目物質が上層布において検出量が最大となる布の組み合わせを明らかにすることは喫緊の課題であると考えられる。油溶性の有機化学物質の皮脂・汗中の挙動の検討を行うことは、本研究の最終目的である「着るだけで健康促進する」ような新規材料の開発に多いに貢献するものと考える。そこで有機化学物質に関する研究に焦点を絞って進めていく予定である。 一方、今年度に行った鉛以外にその他の有害な重金属に関しても検討し、挙動の再現性の確認および汗中の重金属が体外排泄された際に肌(体)に残存せずに着衣している被服中に吸着させ、その多く吸着する被服は直接肌に触れる層ではなくより外側の層に留まる機構を構築するために、種々の素材を用いて検討する予定である。
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Research Products
(2 results)