2016 Fiscal Year Annual Research Report
個人のマインドワンダリング特性とその操作可能性に関する研究
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16H06986
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
川越 敏和 島根大学, 医学部, 研究員 (70786079)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | マインドブランキング / マインドワンダリング / 安静時脳活動 / モチベーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、注意を向けるべき課題とは別の内的な事象についてぼんやりと思考するマインドワンダリング(MW)をテーマとした。初年度は、MW特性に関連する機能的ネットワークの同定を目的とし、安静時MRI研究を行った。fMRIの撮像時に、ぼーっと色々なことを考える場合となるべく何も考えない場合の2パターンを条件として設定した。これらの教示はともに安静時fMRI撮像における典型的なものであるが、前者がMWであり、後者は近年提唱された心的状態であるマインドブランキングを反映すると考えられる。当初の計画に加え、この条件差を考慮することでMWにおける認知神経科学的特性を検討できると予想された。実験の結果、これらの条件間には安静時の機能的結合において大きな差が見られ、脳のデフォルト状態であると考えられるMWとは大きく異なる脳活動がマインドブランキングを特徴づけるものとして確認された。具体的にはデフォルトモードネットワークと顕著性ネットワークの強い反相関が描出されたのである。MWと似通った性質をもつマインドブランキングであるが、脳の結合状態が大きく異なることが本研究により示され、現在国際誌に投稿中である。 また、当初予定していたMW特性との関連については、今回の検討では顕著なものはみられなかった。しかし、行動・特性データに着目した解析により、新たにモチベーションとMWが関連していることが明らかになった。課題に対するモチベーションはMWと関連があることは既に知られているが、定常的なモチベーションとMWの関連についてはこれまで検討されてこなかった。本解析では定常的なモチベーションが有意にMWに影響することを示した。この研究については国際誌へ投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先述の通り当初の目的通りの結果は得られなかったものの、本研究によって別の視点からMWの理解を深めることができている。また、MWに似たマインドブランキングという心的状態を脳の機能的結合レベルで捉えることができた。マインドブランキングはその性質からタスクベースに捉えることが難しいため、本結果に対しても議論の余地は大いにあると思われる。しかし、上述の安静時fMRIの撮像によって明らかに異なる脳結合パターンが得られたことは、当該分野における第一歩が踏み出せたものと考える。また、行動データをベースに、定常的なモチベーションとMWの関連を明らかにすることができた。いわゆる「やる気」のなさが、課題中のMWを引き起こすという直観的にも理解しやすい本結果は、MWの理解に寄与するものである。これらの研究は、2本の論文として国際誌に投稿中であり学会発表も予定している。よって、本研究は現時点で「おおむね順調に進展している」と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、次年度は経頭蓋脳直流刺激によりMWの操作可能性を調べる。これまでその操作を行った研究は少ないながらも存在するが、本研究ではMWの生起頻度が変容したことによる認知機能への効果についても併せて検証する。MWの程度の変容により認知課題成績が変化することで、MWと成績との関連をより明白にできるだけでなく、正方向の変化が見られれば、これまでは課題に悪影響を与える要因として捉えられていたMWのメリットについて言及することができる。現在までにパイロットテストとして複数名のデータを測定しているが、残念ながらMWの変容は確認できていない。今後、先行研究の精査と試行錯誤を重ね、電気刺激によるMWの影響と認知機能への波及効果を明らかにしたい。
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