2016 Fiscal Year Annual Research Report
ナノバブルを用いた逆浸透膜における多様なファウリングの制御
Project/Area Number |
16H06996
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
大野 正貴 広島大学, 環境安全センター, 助教 (40781216)
|
Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
|
Keywords | ナノバブル / 逆浸透膜 / バイオファウリング / ファウリング制御 / 次亜塩素酸ナトリウム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、逆浸透膜(RO膜)を利用した水処理において課題となっている膜上に形成される粒子による粒子ファウリングと生物膜によるバイオファウリングの制御を目的としている。この制御方法として、近年、次世代のRO膜として開発が進められている塩素耐性を持つ膜の利用を想定した次亜塩素酸ナトリウム(以下、塩素)を使用したバイオファウリング制御と無機粒子や微生物よりもサイズが小さいナノバブルの利用を考え、ナノバブルを塩素と併用することで剥離が困難な粒子と生物膜のマトリックス形成を阻害し、剥離性を高め、粒子、生物膜両方を完全に除去できる洗浄方法の確立を目指している。本研究の計画および方法として、ナノバブルの堆積粒子の剥離性評価、ファウリング制御に向けた洗浄条件の検討、実証プラントによる粒子やバイオファウリングへの評価と適用の3項目を設定し、実施した。H28年度は、ナノバブルによる堆積粒子の剥離性およびその効果をフローセルによるラボスケールの連続ろ過試験で評価し、粒子ファウリング制御のための洗浄方法を確立した。さらに、確立した洗浄方法をもとに、粒子やバイオファウリング制御におけるナノバブルと塩素の併用による洗浄方法の確立と洗浄条件の最適化を行い、これらの併用洗浄により膜上に形成させた粒子とバイオフィルムの複合ファウリングを効果的に除去可能であることを明らかにした。本研究で得られた成果は、第51回日本水環境学会年会で発表済みである。さらに、国際会議として7th IWA-ASPIRE Conference 2017およびWater and Environment Technology Conference 2017において発表を予定している。これらの発表に関連した論文を執筆中でありDesalination誌に投稿予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、RO膜上に形成される粒子ファウリングとバイオファウリングの制御を、塩素による殺菌効果とナノバブルによる剥離性の向上効果を期待して塩素とナノバブルの併用により粒子、生物膜両方を完全に除去できる洗浄方法の確立およびその実証を目的としている。本研究の計画として、ナノバブルの堆積粒子の剥離性評価、ファウリング制御に向けた洗浄条件の検討、実証プラントによる粒子やバイオファウリングへの評価と適用の3項目を設定し、実施した。平成28年度は、ナノバブルの堆積粒子の剥離性評価について、当初の研究計画を達成した。ここでは、膜上堆積粒子の洗浄・除去をラボスケールの連続ろ過試験で評価した。膜上堆積粒子を純水のみでも0.1MPaの低圧力と50 mL/minの流量の物理洗浄において8割以上除去できることを確認した。また、ファウリング制御に向けた洗浄条件の検討についてもほぼ計画を達成した。ここでは、上記の確立した洗浄方法をもとに、粒子やバイオファウリング制御におけるナノバブルと塩素の併用洗浄方法の確立と洗浄条件の最適化を行った。具体的には、カオリンとPseudomonas aeruginosaから調製したモデル水をRO膜に通水し、膜上に粒子と生物膜の複合ファウリングを形成させ、ナノバブルと塩素の単独及び併用洗浄によってファウリング制御を試みた。各洗浄による制御効果は膜上堆積物量と純水透過流束の変化により評価した。複合ファウリングは粒子のみでは除去可能であった純水やナノバブル洗浄では2~6割程度しか除去できず、塩素とナノバブルの併用洗浄では9割程度除去可能であった。また、洗浄時の圧力の有無による洗浄効果への影響を検討し、加圧時の洗浄より無圧時の洗浄の方が塩素とナノバブルによる洗浄効果が20%程度高いことが示され、加圧時には粒子やバイオフィルムの間隙にナノバブルが入り込めない可能性が示唆された。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の計画として、28年度にファウリング制御に向けた洗浄条件の検討において確立した洗浄方法のうち未達成であるナノバブル生成時の気体成分を変化させることで、堆積粒子や生物膜の除去量が関係するか評価しつつ、最適な洗浄条件を見出す。さらに、粒子やバイオファウリングにナノバブルと塩素を併用した洗浄を適用するため、4インチのROモジュールを搭載した膜評価装置を用いて上記までで見出した最適な洗浄条件をもとにより実際の処理現場に近い長期間のパイロットスケールの実証試験を行い、膜評価装置で自然水に対してもファウリング制御を実証レベルで証明する。ここでは、膜評価装置にフローセルを並列で装着し、必要に応じて回収することで、試験期間中は確認することのできない膜モジュール内の堆積粒子や生物膜の経時的な変化や制御の効果を評価する。貯水池等の自然水や下水二次処理水及び実験廃水のような人工水を原水としたファウリングの起こり易さにバリエーションを持った水源や水温の低い冬期にバイオファウリングの起こりにくい条件下で貯水池水を原水とした粒子ファウリング挙動の把握とナノバブルと塩素の併用による制御を試みる。また、粒子ファウリング制御へのこれらの併用洗浄の効果の有効性を明確に示すため、実証試験装置の前段にカートリッジフィルターによる除濁のための前処理を組み、フィルターの公称孔径を変化させることで、ナノバブルと塩素の併用洗浄によりどの程度の水質レベルまで従来の前処理を簡略化または緩和できるかを評価する。実証試験によって得られた結果から粒子やバイオファウリングへのナノバブルと塩素を併用した洗浄方法について、現行の酸やアルカリによる薬品使用時とファウリング制御、洗浄に伴う処理システムの違いや膜交換頻度等の水処理システムの面から比較し、開発した本方法の優位性を評価する。
|