2016 Fiscal Year Annual Research Report
アリストテレス自然学のアラビア語およびラテン語における伝承の文献学的研究
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16H06997
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
三村 太郎 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (50782132)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | アラビア語写本 / イスラーム科学史 / アリストテレス自然学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、『天球について』アラビア語原典の校訂を進めた。本作品は、ベルリン写本で66フォリオにも及ぶ大部の著作であり、全体の校訂の完成には、ある程度の時間がかかることが予想された。とはいえ、すでに関連する2写本(ベルリン写本およびフィラデルフィア写本)の全ページのデジタル・イメージを入手しており、そのイメージ・データの調査に基づいて、すでに、Taro Mimura, “The Arabic Original of (ps.) Mashaallah’s Liber de orbe: its date and authorship”, The British Journal for the History of Science 48 (2015), 321-352で以下のような本作品の校訂指針を打ち出している。まず、両写本を比べると、ベルリン写本は本作品の全体を収録している一方で、フィラデルフィア写本は、いくつかの章が欠落するのみならず、章の入れ替えがみられることから、フィラデルフィア写本に収録されている本文は、のちの学者による編集を経たものだと考えられるため、本作品の校訂を行う際には、より原文に忠実で全ての章の本文を収録していると考えられるベルリン写本を底本としつつ、フィラデルフィア写本の本文と綿密に比べながら、フィラデルフィア写本のほうが良い読みを持つと判断した場合はフィラデルフィア写本の読みを採用する、というものである。この校訂方針に従って、その全体の校訂を完成させた。さらに、当初平成29年度に行う予定だった英訳作業も進めることができた。加えて、11月にボストンで開催されたMESA(アメリカ中東学会)に参加することで、本研究に関連する研究者たちとの情報交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
半年間での執行だったため、当初予定していたベルリンとフィラデルフィアへの訪問調査はできなかった。しかし、平成29年度で行う予定だったテクストの英訳作業を前倒しで進めることができたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度前半は、『天球について』アラビア語原典の英訳を完成させる。また、7月には4年に一度開催される国際科学史学会がブラジルで開かれるため、国際学会の場で、本作品の分析することで得られたドゥーナシュの宮廷科学者としての役割に関する研究成果を発表する。
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Research Products
(5 results)