2016 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル化社会に相応しい入管法制の再構築――裁量的決定のプロセス分析を通じて
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16H07006
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
服部 麻理子 山口大学, 経済学部, 准教授 (00625014)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 出入国管理 / フランス法 / 行政裁量統制 / 外国人 / 法的性質決定 |
Outline of Annual Research Achievements |
国境管理を再強化する流れが見られる中で、国境をまたぐ人権保障の要請と各国の出入国管理法制上の警察目的とを適宜に調整する必要性が高まっている。そのような調整を可能にするためには、理論的裏付けが強固であるとともに柔軟な運用に耐える法的枠組みが不可欠である。そこで、本研究では、主としてフランス法を対象とし、警察法分野における裁量的行政決定に対する裁判統制のあり方と、事実の法的性質決定論とを接合しつつ、「外国人」の出入国管理に関する判例法理を分析している。 平成28年度は、国家との繋がりや家族の居場所など利益状況の異なる「外国人」について諸判例を分析し、「外国人」の類型と援用される権利の性質によって裁判統制手法がどのように異なっているかを比較した。とりわけ、EU法・欧州法の進展にしたがい、EU市民に対する国外追放処分や在留拒否処分については、他の一般外国人に対する場合と比較して、より強度の裁判統制に服する傾向が見られる。 平成28年度は、これに加えて、出入国管理法制に対する哲学的裏付けを追究するために、EU法における連合市民権論やアメリカ法における移民正義論についても文献の読解を進めた。その結果、国家や自治体あるいは国家連合といった共同体に対する帰属度や貢献度に応じて国籍や市民権を保障すべきとする考え方や、福祉や人道の観点から人の移動を自由に保障すべきとする考え方、そもそも国境を撤廃すべきとする考え方などを整理することができた。 以上をもとにして、比較法研究者や法哲学研究者との意見交換を行い、論文公表に向けた論点のあぶり出しをすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
外国人の出入国管理に関する判例分析および情報収集を順調に行うことができた。また、国内での学会・研究会等への参加を通じ、複数分野の専門家と意見交換する機会を多く持つことができた。とくに、法哲学研究者との議論により、当初は予定していなかった論点にも気づくことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、これまでに分析してきた判例および学説状況を整理し、論文として公表する。また、国内のフランス行政法研究者が集う研究会等において、研究成果を報告する予定である。
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