2016 Fiscal Year Annual Research Report
非平衡定常状態の流体力学極限に対する大偏差原理による解析
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16H07041
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
角田 謙吉 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 学術研究員 (10783938)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 流体力学極限 / 大偏差原理 / 非平衡定常状態 / 反応拡散方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
非平衡定常状態に関する研究は数学及び物理学における問題の中で依然として活発に研究されている。本研究は流体力学極限の手法を用いて大偏差を考えることにより、非平衡定常状態の数学的な解析を行うものである。今年度は粒子の出生と死滅を伴う排他過程に対する解析を行った。 出生と死滅を伴う排他過程に対する流体力学的方程式は反応拡散方程式となることが知られている。このことより出生と死滅を伴う排他過程の定常状態は、反応拡散方程式の定常解に集中していることが自然に予想される。この定常解への測度の集中現象は流体静力学と呼ばれており様々な模型において研究されているが、反応拡散方程式の定常解が一般には一意的でないことからも、出生と死滅を伴う排他過程の場合には証明が困難であった。本年度の研究実績として、粒子系を定めるマルコフ過程の飛躍率に対するある仮定の下で、出生と死滅を伴う排他過程の定常状態に対して大偏差原理を示し、それを用いてこの模型に対して流体静力学を証明した。この結果は本研究課題の本年度の目標そのものでり、予定通り課題を進めることが出来た。また本結果を論文としてまとめ、専門雑誌に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の解析により粒子の出生と死滅を伴う排他過程の定常状態に対して、大偏差原理及び流体静力学を証明することに成功した。特に前者の大偏差原理を証明することは本研究において重要な課題であった。次年度はこの大偏差原理を基にして解析を進めることになるため、初年度の研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は今年度に得られた大偏差原理のレート関数について解析を行う予定である。大偏差原理のレート関数を解析することは、定常状態が長距離相関を持つという、物理的に興味深い性質と密接している。しかしながら大偏差原理のレート関数の解析は従来の手法のみでは上手く解析できないため、新たな解析手法を導入する必要がある。この目的のため実解析や関数解析の手法を模索及び適用しながら研究を進める。
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