2016 Fiscal Year Annual Research Report
肝内微小環境による膵癌細胞のセレクション機構解明と微小環境ストレスの制御
Project/Area Number |
16H07053
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
堀岡 宏平 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (10783699)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 膵癌 / 肝微小転移 / 癌関連線維芽細胞 / 好中球 / NETs / 血管内皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、膵癌の転移形成のプロセスの中で癌細胞から離れた循環膵癌細胞が肝臓へ到達した後に働く選択機構と、血管内皮細胞を含む肝内微小環境との関係性ついて解明し、肝内微小環境ストレスを標的とした癌細胞セレクション機能強化による治療法の開発を目的とする。 循環腫瘍細胞の肝内微小血管内での捕捉状態を観察するため、マウスにGFPで標識した膵癌細胞を脾注し、一定時間後に解剖して肝臓を蛍光顕微鏡で観察することで、転移巣の観察が可能な微小転移モデルを作成した。肝微小転移巣をα-SMA抗体を用いて免疫染色すると、転移早期から癌細胞周囲にα-SMA陽性細胞の存在が認められ、癌細胞脾注後7日目に解剖したマウスの微小肝転移巣では、ほぼ100%の癌細胞にα-SMA陽性細胞の誘導が見られたことから、癌関連線維芽細胞が微小転移巣での選択機構から逃避するために、重要な役割を担っている可能性が示唆された。循環腫瘍細胞が血管に捕捉される際には、血管内皮細胞と何らかの相互作用が起こっていると考えられる。好中球で近年注目されている現象に、好中球が各種タンパク分解酵素やヒストンが付着したDNAの網を細胞外に放出し、微生物を補足、殺傷するNeutrophil extracellular traps(NETs)があるが、このNETsが血管内皮細胞を傷害するとの報告がある。マウス微小肝転移巣をミエロペルオキシダーゼにて染色すると肝微小転移巣の辺縁に好中球の浸潤が見られ、マウスに癌細胞を脾注し、NETs阻害剤のDNaseⅠを投与したところ、control群に比べて有意に肝微小転移が減少していた。マウスの骨髄から密度勾配遠心法や磁気ビーズを用いて好中球を分取し、癌細胞と間接共培養すると、好中球にNETsが誘導された。循環腫瘍細胞が、好中球にNETsを誘導し、血管内皮傷害を引き起こして微小血管への接着、血管外遊走に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
癌細胞が肝内微小血管に捕捉される機構、捕捉された後の微小環境の影響については好中球NETsの関与と、癌関連線維芽細胞の影響が示唆される結果が得られ、おおむね順調に進展しているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
癌細胞によって誘導されるNETsが血管内皮細胞に与える影響と、その後、癌細胞の血管内皮へ接着、血管外遊走していくメカニズムについて、in vitroで癌細胞の血管内皮通過モデルなどを用いてさらに解析を進め、in vivoにおいてもルシフェラーゼ発現膵癌自然発生マウス(KPCLマウス)を用いて、NETsが膵癌の微小転移形成に与える影響について、NETsの阻害や誘導実験を行って解析を進める。
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