2016 Fiscal Year Annual Research Report
硫酸カルシウム連通多孔体からの炭酸アパタイト連通多孔体の創製
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16H07061
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 生体材料 / 骨補填材 / アパタイト |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では石膏連通多孔体から炭酸アパタイト連通多孔体を調製し、迅速に骨に置換される炭酸アパタイト連通多孔体を創生することを目的とする。 平成28年度は硫酸カルシウム顆粒を調製、硬化させて連通多孔体を形成し、炭酸カルシウム連通多孔体を経由して炭酸アパタイト連通多孔体を形成した。具体的には、自己硬化性を有する石膏顆粒を作成した後に硬化させて二水石膏顆粒とし、溶解析出反応により炭酸アパタイトへと組成変換する。まず、硫酸カルシウム連通多孔体は硬石膏粉末に焼結助剤として10, 20%塩化ナトリウムを含有し、10%メタノールで練和後、100 MPa、室温、24時間乾燥させた。ふるい分けして目的のサイズの顆粒を得た後、水と練和して100%湿潤下、室温、24時間静置して二水石膏硬化体を得た。得られた硬化体を750℃で6時間加熱して無水石膏硬化体を得た。それぞれの反応は粉末X線回折(XRD)で追跡し、走査型電子顕微鏡(SEM)で多孔体構造を確認した。得られた無水石膏硬化体をpH 9に調製した炭酸ナトリウム溶液に浸漬し、90℃, 3時間反応した。XRDにより得られた炭酸カルシウム多孔体はカルサイトとバテライトの2種の多型を含んでいた。炭酸カルシウム多孔体をpH 7.4に調製したリン酸ナトリウム水溶液に浸漬し、90℃、3日間反応することで完全にアパタイトとなった。 得られた炭酸アパタイト多孔体の機械的強度は間接引張強さを測定したところ約1.4 MPaであり、製品化されているブロック状の骨補填材と比べても十分な機械的強度を有していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は炭酸アパタイト多孔体の調製までを予定していた。硫酸カルシウム多孔体の形成から炭酸アパタイト多孔体の形成までの組成変換反応の条件検討を行い、炭酸アパタイト多孔体を得るところまで進捗している。さらに、機械的強度の測定、表面観察などの基礎的な物性評価も終了していることから、概ね予定通り進捗していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度で概ね硫酸カルシウムの自己硬化性を利用した炭酸アパタイト多孔体の形成条件を見出した。平成29年度は調製した炭酸アパタイト多孔体を実験動物に埋入し、骨形成評価、材料の吸収評価をμ-CTおよび病理組織学的検索により行う。具体的には、動物実験に用いる炭酸アパタイト多孔体は平成28年度の検討により得られた条件をもとに調製し、多孔体のサイズはφ6 mm x 3 mmを予定している。実験動物としてはウサギを予定しており、具体的な処置としては、ウサギ大腿骨遠位端にφ6 mm × 3 mmの骨欠損を作成し、欠損サイズと同じサイズの炭酸アパタイト多孔体を埋入する。埋入期間は4週、12週、24週を予定しているが、実際の埋入期間は結果を見ながら判断する。埋入期間が終了した時点でウサギは安楽死させ、周囲組織と一塊にして試料を摘出する。摘出した試料はμ-CTによる観察後、脱灰組織の場合はヘマトキシリンーエオシン染色を、非脱灰組織の場合はビラヌエバゴールドナー染色を行い、病理組織学的検索を行う。
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