2016 Fiscal Year Annual Research Report
膵管内乳頭粘液性腫瘍の発生メカニズムを反映した新規マーカーの確立
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16H07095
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
山口 洋志 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (80457704)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 膵管内乳頭粘液性腫瘍 / 遺伝子改変マウス / GNAS |
Outline of Annual Research Achievements |
背景:本研究は膵管内乳頭粘液性腫瘍(Intraductal papillary mucinous neoplasm: IPMN)の発生メカニズムに基づき、質の高いトランスレーショナルなvalidationのなされた新規マーカーを確立することを目的としている。研究代表者が作成したIPMN発生遺伝子改変マウスに由来する膵癌細胞株において、IPMN発生原因遺伝子変異の発現誘導により、有意に発現が増加する分子群をmicroarray解析により同定した。そのうち12分子に関してqPCRによるvalidationを施行していた。 実績1.研究計画に従い、上記12分子に関してマウス実験系における追加のvalidationを行った。IPMN発生遺伝子改変マウス由来膵癌細胞株において、有効な抗体の存在する一部の分子に関しては、Western blotによって蛋白レベルでの発現増加を確認した。原因遺伝子変異の発現をoffにした場合に、上記12分子全ての発現が有意に低下することをqPCRで確認した。また、IPMN発生原因遺伝子変異のeffectorと考えられるシグナル伝達経路を薬理学的に刺激し、これら12分子の変化を解析し、関連するシグナル伝達経路を確認した。IPMN発生遺伝子改変マウスの膵組織を免疫染色し、IPMN発生過程の上皮病変において高発現がみられる分子を同定した。IPMN発生遺伝子改変マウスを起点とした詳細なvalidationを行うことにより、IPMN発生メカニズムに基づいたマーカー分子を同定する上で基礎となる重要な知見が得られた。ヒト実験系におけるトランスレーショナルな解析を、効率的かつ効果的に進めていく上でも必須の実績であると考えられる。 実績2.ヒト実験系におけるvalidationに必須の作業として、所属機関におけるIPMN切除症例に関するデータベースの作成を開始した。臨床病理学的所見や予後に関して明らかにしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マウス実験系におけるvalidationは概ね順調に進展している。Microarray解析から同定された12分子に関して、qPCR、Western blotによるvalidationを進め、IPMN発生原因遺伝子変異のOn/Offに連動して、発現が有意に変化することを確認した。IPMN発生原因遺伝子変異のeffectorと考えられる、シグナル伝達経路のactivatorとinhibitorを用いて、12分子の発現変化を解析し、これらの分子の発現に関連するシグナル伝達経路を確認できた。さらに、IPMN発生遺伝子改変マウスモデルの膵組織の免疫染色を行い、明瞭な染色性が得られ、IPMN発生過程で発現が増加する分子を絞り込むことができた。これらの解析から、ヒト実験系におけるvalidationを、効率的かつ効果的に進める上で重要な知見が得られた。 現在の研究は、ヒト実験系におけるvalidationに移行しているが、やや遅れがみられる。ヒト実験系でのin vitroのvalidationでは、応募者が以前に確立した正常ヒト膵管上皮細胞モデル(Yamaguchi H, et al. Am J Pathol 177, 2010)を用いた解析を予定していた。この正常ヒト膵管上皮細胞モデルは膵切除標本を利用して確立するものであるが、細胞分離・培養システムの再構築とIRBの審査に時間を要している。そのため、ヒト実験系でのin vivoのvalidationも開始する方針とし、所属機関におけるIPMN切除症例に関するデータベースの作成を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.ヒト実験系におけるin vitroのvalidation:IRBの承認が得られ次第、膵切除標本から正常ヒト膵管上皮細胞モデルを確立し、in vitroのvalidationを開始する。具体的にはまず有望と考えられる分子の発現状態を解析する。IPMN発生原因遺伝子変異のeffectorとして重要なシグナル伝達経路のactivatorとinhibitorを投与して、分子の発現変化を解析する。ヒト膵癌細胞株を用いて、同様の解析を行い、正常ヒト膵管上皮細胞モデルでの結果と違いがみられるのかを解析する。正常ヒト膵管上皮細胞モデルの確立にさらに時間を要する場合には、膵癌細胞株を用いた解析を先行させることも考慮する。有望な分子が同定された場合には、安定細胞株を確立し、機能解析を行うが、進捗状況がやや遅れているため、in vivoでのvalidationを優先させる。 2.ヒト実験系におけるin vivoのvalidation:in vitroの解析にやや遅れを生じているため、所属機関におけるIPMN切除例に関するデータベースの作成を既に開始している。データベースに登録されたIPMN切除例に関して、腫瘍組織の免疫染色を行い、分子の発現と臨床病理学的因子との関連性を解析する。Pilot解析として、IPMNの進行度に応じて、adenoma、non-invasive carcinoma、invasive carcinomaの代表的な症例を5例ずつ程度抽出して、免疫染色を行い、抗体の有効性や染色条件を評価する。分子発現に違いがみられるか解析し、注目すべき病変や臨床病理学的因子に関して検討する。validationを行う対象症例や症例数に関して決定し、免疫染色を進めていく。 ヒト実験系におけるin vitroとin vivoのvalidationの結果から、IPMNの診断、病勢把握、治療において有効なマーカーとなり得る新規分子を同定する。
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Research Products
(5 results)