2016 Fiscal Year Annual Research Report
サブナノ空間の応力誘起変態特性を示す多孔質超弾性体の創製
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16H07104
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
高崎 祐一 横浜市立大学, 国際総合科学部(八景キャンパス), 特任助手 (30779658)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 有機超弾性 / 金属錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
超弾性を示す合金は約80年前に発見され、現在は形状記憶合金としての利用例が有名である。本研究では、超弾性(応力負荷・除荷による可逆的な結晶相転移に伴う結晶変態特性)を示す多孔性金属錯体を探索および新規合成し、応力誘起の結晶構造変化を利用して、ナノスケールの細孔内空間の形状、内径、方位、次元性等を可逆的・能動的・精密に制御する手法の開発を目指す。 これまでに研究代表者は、一種の多孔性金属錯体結晶において超弾性挙動を見出している。平成28年度は、多孔性超弾性体の合成指針を得るための足がかりとして、研究代表者が所属する横浜市立大学高見澤研究室において見出された有機超弾性体と類似の分子構造をもつ有機化合物を中心に物質探査を行った。約110種の有機化合物の単結晶を育成し、顕微鏡下の結晶変形観察、単結晶X線構造解析、単結晶試料のせん断試験等を行った結果、平成28年度終了時までに10を超える数の有機化合物において超弾性挙動を確認した。 具体的には、ベンゼン環を主骨格とする平面性分子のファンデルワールス結晶、アルキル鎖を主骨格とする分子の水素結合結晶である。探査した物質の大半は、弾性変形・塑性変形をほとんど示さずに壊れるか、すべり変形を示した。その他の一部の化合物では、双晶変形または超弾性変態を示し、いずれも三斜晶または単斜晶に属する結晶構造をもつことが分かった。一方、tert-ブチル基やスルホニル基などの比較的嵩高い置換基をもつ化合物については、いずれも双晶変形ないしは超弾性変態を示さなかった。これは、結晶変態の過程で求められる分子配向の変化が嵩高い置換基の影響で困難になっているためと推察される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標であった多孔性金属錯体の超弾性挙動の探査は、平成28年度終了時点で目立った成果を残せていないが、並行して取り組んだ有機化合物における超弾性挙動(有機超弾性)の探査はおおむね順調に進み、新たに複数種の有機超弾性体を見出すことができた。 既存の有機化合物の結晶化実験と比較して、多孔性金属錯体の合成・結晶化実験は、錯体形成、細孔の形成、溶媒脱離後の細孔の維持など、超弾性変態の確認実験以前に達成すべき項目が多く、進捗がやや遅れている。 一方、超弾性現象は結晶で見られる現象であり、これまでに有機化合物だけでなく金属錯体でも見られることを確認している。そのため、今回見出した有機超弾性体における、分子構造と結晶構造の関係、超弾性変態機構などの知見は、本研究課題の目標である多孔性超弾性体の探査・合成にもそのまま活用できる。従って、本研究の進捗状況はおおむね順調であると考えた。今後、多孔性超弾性体の探査を推進し、本研究の目標達成を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
超弾性を示す多孔性金属錯体結晶を探査する上で必要な、結晶構造、分子間相互作用、分子配列等の条件が徐々に明瞭になってきた。これまでに見出した有機超弾性体をリード化合物として用い、また平成28年度に得られた知見を基に物質探査の対象範囲を絞り込んで、合成実験を加速させる。今後、多孔性超弾性体の探索を継続することで、経験的な知見を蓄積して具体的な合成指針をうち立てる。
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Research Products
(2 results)