2016 Fiscal Year Annual Research Report
組織型プラスミノーゲン活性化因子に着目した動脈管の内膜肥厚形成のメカニズム
Project/Area Number |
16H07107
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
齋藤 純一 横浜市立大学, 医学部, 助教 (30779301)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 動脈管 / 内膜肥厚 / 内弾性板 / 組織型プラスミノーゲン活性化因子 / プラスミノーゲン / マトリックスメタロプロテイナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
動脈管の閉鎖と開存の制御は新生児医療において重要な課題である。早産児では動脈管開存症が生命予後を悪化させ、一方である種の先天性心疾患では生存のために動脈管開存が必要である。近年、胎生中期から始まる動脈管の内膜肥厚形成が、動脈管の解剖学的閉鎖に必須であることが明らかとなった。しかし、動脈管の内膜肥厚形成を焦点とした治療は存在せず、その制御はできていない。 本研究では、ヒトの動脈管に対する網羅的遺伝子解析を行い、動脈管の内膜肥厚部に高発現する遺伝子を同定した。そして、同定された遺伝子のうち、ラットの動脈管と大動脈の内皮細胞での遺伝子発現の比較により、組織型プラスミノーゲン活性化因子が動脈管の内皮細胞に高発現することを発見した。ヒトおよびラットの動脈管の免疫組織染色で、組織型プラスミノーゲン活性化因子のタンパクが、内膜肥厚部(特に内皮細胞)において多く発現することを確認した。また、未熟ラットの動脈管においても、組織型プラスミノーゲン活性化因子が発現していることを確認した。 組織型プラスミノーゲン活性化因子はプロテアーゼ活性を有し、血栓溶解作用以外に血管内膜肥厚作用が指摘されている。そこで、動脈管と大動脈の内皮細胞に対するゼラチンザイモグラフィーを行ったところ、動脈管の内皮細胞で高いマトリックスメタロプロテイナーゼ活性が確認された。また、組織型プラスミノーゲン活性化因子が作用する基質となるプラスミノーゲンを添加したところ、動脈管におけるマトリックスメタロプロテイナーゼ活性が著明に上昇することが確認された。 今後は、内弾性板のへの組織型プラスミノーゲン活性化因子の作用について、in vivoでの検討を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた実験として、動脈管の内皮細胞に対するプラスミノーゲン添加を行った。動脈管の内皮細胞に対するプラスミノーゲン添加により、マトリックスメタロプロテイナーゼの活性化が起こることがゼラチンザイモグラフィーで確認できた。よって、計画していた実験を遂行し、予想していた結果が得られているため、研究としてはおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまでの検討で、動脈管の内皮細胞へのプラスミノーゲン添加により、マトリックスメタロプロテイナーゼの活性化が起こることが分かった。マトリックスメタロプロテイナーゼは、弾性線維の分解を起こすことが知られている。そのため次の計画としては、in vitroおよびin vivoでのプラスミノーゲン添加により、内弾性板の断裂が起こるかを検討する。
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Research Products
(2 results)