2016 Fiscal Year Annual Research Report
女性薬物依存症者の月経前症候群がライフスタイルに与える影響の解明
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16H07110
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
一柳 理絵 横浜市立大学, 医学部, 助教 (60781896)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 薬物使用障害 / アルコール使用障害 / 月経前症候群 / ライフスタイル / 月経随伴症状日本語版 / 首尾一貫感覚評価尺度 |
Outline of Annual Research Achievements |
女性薬物依存症者の回復は、生理など女性ホルモンが来す身体的精神的負荷の影響を受けやすい。わが国において、月経前症候群(Premenstrual syndrome; 以下PMSとする)によって日常生活に支障を及ぼす者は53%、治療を要する者は20~30%といわれている。PMSの発症原因は明らかにされていないが、生活習慣やストレスがPMSの症状を左右する。女性薬物依存症者においてもPMSは、断酒および断薬継続の阻害要因になり得ると考える。そこで本研究では、女性薬物依存症者におけるPMSの実態を調査し、女性薬物依存症者のライフスタイルがどのようにPMSの症状に影響するかを明らかにする。調査方法は、匿名自記式による留置質問紙調査である。本研究の結果は、社会復帰を目指す女性薬物依存症者の月経周期に特化した看護介入を検討する上で示唆を提供し、その結果、飲酒および薬物再使用の防止に貢献できると考える。 平成28年度は、薬物依存がPMSに影響を与える可能性、またそれをめぐって看護職者が女性薬物使用障害者を支援できる可能性を検討するために、薬物依存とPMSに関する国内外の先行文献をレビューした。レビューした結果をまとめたものを、第15回日本アディクション看護学会学術集会で「薬物依存と月経前症候群に関する文献レビュー」として発表した。また、第38回日本アルコール関連問題学会、第36回日本看護科学学会、アディクション研修・施設交流会等に参加して、依存症に対する医療・看護の展望についての情報収集と、質問紙調査への研究協力対象者の紹介依頼を行った。質問紙を作成するにあたり、用いる尺度を検討した。質問紙については、当事者回復者の意見を取り入れた質問紙を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、薬物依存とPMSに関する先行文献をレビューし、国内外の研究動向を明らかにした。先行文献より、女性薬物依存症者が薬物使用に至る背景には、幼少期における重要他者との基本的信頼の揺らぎがあり、アルコール使用障害者や薬物依存症者は、「物」のみを信用し「人」に頼ることができないためアルコールや薬物を使用するという対人関係の特徴をもつと報告されている。Aron Antonovskyによって提案された首尾一貫感覚(Sense of Coherencs;以下SOCとする)は、ストレスやトラウマに耐えて心身の健康を保持し、対処に成功している人々に共通して存在する健康要因であり、SOC評価尺度は健康保持能力、ストレス対処能力を測れる。アルコール依存症者を対象にしたSOCの研究があり、SOC評価尺度はアルコール使用障害者や薬物依存症者の対人関係の特徴に適していると考えた。その結果、質問紙を作成するにあたり、当初予定していた尺度である月経随伴症状日本語版(Menstrual Distress Questionnaire;以下MDQとする)とコーネル医学指数健康評価表簡易版から、MDQとSOC評価尺度へ変更したため、質問紙作成に時間を要したが、大学の倫理審査の承認を得たため、今後、研究対象者へ質問紙を配布する段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、対象者に対して質問紙を配布し、回収された質問紙のデータ分析を行う。統計分析の方法については、全変数の記述統計を求め、属性・日常生活行動等を含めるライフスタイルの要因別のMDQ得点を評価するために対応のないt検定ないし一元配置分散分析を行う。次に、MDQ得点を従属変数とし、他の変数を独立変数とした重回帰分析を行う。また、分析結果より女性薬物依存症者におけるPMSの実態を明らかにして、研究成果をまとめる予定である。なお、研究成果については、学会で発表する予定である。
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Research Products
(1 results)