2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H07124
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
山本 真由子 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 講師 (00784901)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 和歌序 / 源道済 / 前栽歌合 / 歌合日記 / 遣水 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.同じ宴集で作られた2篇の「序」の関わり、和歌制作の背景となった状況の推定―平安朝の和歌をめぐる「序」を収集、整理した結果、同じ宴集で、漢文と和文で2篇の序が書かれていることが明らかになった。そこで、「斎宮規子内親王野宮庚申の和歌序二篇について―「松の声夜の琴に入る」と「初雪を翫ぶ」―」(『国語国文』85巻9号、臨川書店、2016年9月)において、従来の研究でなされていなかった、漢文の序の訓読、注釈を示した上で、2篇の序の関わりから、序と和歌が作られた宴集の状況を詳しく推定した。 2.同じ歌合で作られた「序」と「記」などの解釈、宴集の趣向の解明―口頭発表「三条左大臣殿前栽歌合の序と日記をめぐって」(大阪市立大学国語国文学会総会、2016年7月30日)では、同じ歌合で作られた漢文の「序」と和文の「記」を、表現の関わりをふまえて解釈した。また、宴集の趣向を検討した。発表の内容を補訂して、「三条左大臣殿前栽歌合について―「遣水虫の宴」の趣向―」(『文学史研究』57号、大阪市立大学国語国文学研究室 、2017年3月)にまとめた。 3.「序」と同時に詠まれた和歌と制作時期の推定、および「序」の作者の表現の特質の考察―口頭発表「源道済の詠紅葉蘆花の和歌と序をめぐって」(中古文学会秋季大会、2016年10月23日)では、漢文の「序」と同時に詠まれたと考えられる和歌を新たに報告し、従来推定されていた制作時期は再考を要することを指摘した。また、「序」の作者の序と和歌の表現を対照し、特質を明らかにした。さらに、発表の内容を修正し、同題の論文(『国語国文』86巻4号、臨川書店、2017年4月掲載予定)にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、個々の「序」と「記」とを、漢文学と和文学双方の表現をふまえて解釈すること、その解釈に基づき平安朝の和歌制作の背景となった状況を明らかにし、平安朝文学の内実を考察することである。以上の目的に向かっては、着実な進展が見られる。 具体的には、同じ宴集で作られた2篇の「序」の関わりを検討し、和歌制作の背景となった状況を推定した。また、貴顕の主宰した歌合で作られた「序」と「記」を解釈し、宴集の趣向を解明した。さらに、「序」と同時に詠まれた和歌と制作時期を推定し、「序」の作者の表現の特質を考察した。 引き続き、個々の宴集の「序」と「記」および和歌の本文を校訂し、漢文学と和文学双方の表現をふまえて解釈を進めている。 平安朝の和歌をめぐる「序」と「記」を収載する資料の収集、整理は、まだ途上である。和歌の真名序と仮名序については、手付かずの資料が残っている。また、和歌の記については、歌合の資料の重要性が判明したため、整理に取り掛かっている。併せて、「序」と「記」と同時に詠まれたと推定される和歌を収集している。以上の収集、整理の成果として、平安朝に作られた「序」と「記」と、同時に詠まれた和歌、それらを収載する資料を一覧できる表の作成を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目に引き続き、平安朝の和歌をめぐる「序」と「記」を収載する資料の収集、整理を進める。和歌の真名序をついては、『本朝文粋』、『本朝続文粋』に続いて、『本朝小序集』、『扶桑古文集』、『王沢不渇抄』などから、収集、整理する。和歌の仮名序については、私家集に続いて、仮名序を集成した書、歌学書などから、収集、整理する。和歌の記については、歌合を中心に、整理を進める。併せて、「序」と「記」と同時に詠まれたと推定される和歌の収集を進める。『新編国歌大観』、『新編私家集大成』、『平安朝歌合大成』などを活用して和歌を収集する。以上の収集、整理の成果として、平安朝に作られた「序」と「記」と、同時に詠まれた和歌、それらを収載する資料を一覧できる表を作成する。 さらに、個々の「序」と「記」および和歌の本文を校訂し、漢文学と和文学双方の表現をふまえて解釈を進める。個々の作品の検討を積み重ねて、平安朝の和歌制作の実態を明らかにし、また制作の背景を文章とするにあたり、どのような理由で「序」あるいは「記」が、また漢文あるいは和文が選択されたのかを考察する。「序」や「記」に限らず、物語や願文など漢文と和文双方の文学作品を多く読み、当時の文学について幅広く関心をもち、考察を深める。作品の解釈や、考察の結果をもとに、論文を作成して、学術誌に掲載することを目指す。
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Research Products
(3 results)