2016 Fiscal Year Annual Research Report
特異曲面結び目のダイアグラムのPN同値類とその応用
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16H07125
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
河村 建吾 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 数学研究所専任研究所員 (00780727)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 特異曲面結び目 / 曲面結び目 / ダイアグラム表示 / 3重点数 / カンドルコサイクル不変量 |
Outline of Annual Research Achievements |
曲面結び目は4次元空間内に埋め込まれた閉曲面のことであり,それを3次元空間内に射影した像に上下の情報を付加したものをダイアグラムという.4次元空間内にジェネリックにはめ込まれた閉曲面を特異曲面結び目といい,これは孤立した横断的2重点(ノードという)を自己交差として持つ.本研究の目的は特異曲面結び目をダイアグラム表示とその局所変形の観点から調べ,特異曲面結び目の性質を明らかにすることである.本年度に行なった研究について以下に記す. (1)ダイアグラムの各点は正則点,2重点,3重点,分岐点,ノードのいずれかであり,(特異)曲面結び目のすべてのダイアグラムの3重点の個数の最小値をその(特異)曲面結び目の3重点数という.3重点数が1となる曲面結び目は(向き付け可能・不可能に依らず)存在しないことが知られている.この結果を特異曲面結び目の場合に拡張することを試みた.その結果,ノードを1個持つ向き付け可能な特異曲面結び目の3重点数は1にならないことがわかった. (2)曲面結び目のダイアグラムはローズマン変形と呼ばれる7種類の局所変形の差を除けば一意に定まる.一方,特異曲面結び目のダイアグラムは7種類のローズマン変形とある1種類の局所変形(PN変形と呼ぶ)の差を除けば一意に定まることが予想されている.カンドルコサイクル不変量はダイアグラムから計算される不変量で,通常これは曲面結び目に対してのみ適用でき,特異曲面結び目に対しては適用できない.その理由はPN変形を施すことで不変量の値が変化してしまうからである.そこでPN変形の下で不変量の値が不変となるようにカンドルコホモロジー群に修正を加えることを試み,これに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
3重点数が小さい特異曲面結び目の特徴付けに関する研究が当初の予定よりも進んでいないため.また,修正版のカンドルコホモロジー群およびその3コサイクルを具体的に求めることができていないことも研究の進度を遅らせている要因である.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究の進捗状況を踏まえて,今後の研究の方針を次のように考えている. (1)向き付け可能性やノードの個数に関する条件を緩めた上で,3重点数が1である特異曲面結び目の特徴付けを行いたい.さらに,3重点数が2や3の場合の特徴付けも考えていきたい.そのため,従来の曲面結び目の研究で用いられている手法(例えば,ダイアグラムの2重点曲線を抽象曲面上に引き戻して,その幾何的性質を考察する)を取り入れることで研究を推し進めていきたい. (2)最近発表されたプレプリント(B. Audoux, J.-B. Meilhan and E. Wagner, arXiv:1703.07999v1, 2017年3月)の結果により,特異曲面結び目のダイアグラムは7種類のローズマン変形とPN変形の差を除けば一意に定まることが証明されたので,特異曲面結び目をダイアグラム表示の観点から研究する準備が整った.この結果から,代表者が構成した修正版のカンドルコホモロジー群を用いることで特異曲面結び目のカンドルコサイクル不変量が定義可能となる.今後は,具体的なカンドル3コサイクルを構成することで特異曲面結び目の分類や3重点数の評価などを行いたい.
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Research Products
(2 results)