2016 Fiscal Year Annual Research Report
超電子受容性ジホスフェン配位子の開発および光学活性らせん分子合成への応用
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16H07126
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
津留崎 陽大 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40623848)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | ジホスフェン / 遷移金属錯体 / 分子内環化反応 / 触媒反応 / 軸不斉 / 1,1’-ビナフチル / リン / 金 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、π受容性が低いホスフィン配位子とは異なり、σ供与性・π受容性ともに高いジホスフェン(リン-リン二重結合)の性質に着目し、触媒活性が高い軸不斉ビアリール置換ジホスフェン配位子の開発を行う。得られた配位子に対する錯形成反応を行うとともに、分子内環化反応の触媒として活用することにより、ヘリセン誘導体などの多様な芳香族化合物の構築を目指す。また、軸不斉ビアリール骨格がもたらすキラル環境を活かすことで、高いエナンチオ選択性を与える反応も開発する。 本年度は、軸不斉ユニットとして広く利用されている1,1’-ビナフチルに着目し、単座配位子となる1,1’-ビナフチル置換ジホスフェン1の合成を検討した。反応活性なジホスフェンの安定化を考慮して、1,1’-ビナフチルの3位にメチル基を導入した。前駆体となる2-ホスフィノ-3-メチル-1,1’-ビナフチル(2)は2-(メトキシメトキシ)-1,1-ビナフチルから5段階、総収率30%で合成した。その後、ホスフィン2の脱プロトン化、スーパーメシチルジクロロホスフィンとの反応によるジホスファンの生成、DBUによる脱塩化水素反応によって、目的とするジホスフェン1を54%の収率で黄色固体として単離した。ジホスフェン1はアルゴン雰囲気下、重ベンゼン溶液中において高い安定性を示した。31P NMRスペクトルとX線結晶構造解析から、ジホスフェン1のリン-リン二重結合性が支持された。さらに、ジホスフェン1の金錯体の合成を検討した。31P NMRスペクトルと予備的なX線結晶構造解析の結果、ビナフチル基側のリン原子の非共有電子対が金原子へη1配位していることが分かった。今後、詳細な構造を決定するとともに触媒反応へと展開する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初合成を計画していたビナフチル置換ジホスフェン1を合成し、その性質を解明するとともに、金錯体の合成にも成功した。これらの研究成果はおおむね計画どおりであることから、上記の自己評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に合成に成功したジホスフェン金錯体の他に、ジホスフェン1と他の11族元素あるいは10族元素との錯形成反応を精力的に検討する。その後、これらの錯体を用いた触媒反応へと展開する。特に、他の配位子では実現しえないジホスフェン錯体独自の反応を開拓する。また、平成28年度は単座配位子の開発に限られていたが、二座配位子の合成についても検討する。この点については、28年度に行った合成条件検討の結果が十分に活かせるものと考えている。
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