2016 Fiscal Year Annual Research Report
テネイシンXとデコリンの脈絡膜新生血管と線維化での役割の解明
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16H07135
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
岩西 宏樹 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (40784319)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 脈絡膜新生血管 / 滲出型加齢黄斑変性 / 創傷治癒 / 細胞外マトリックス |
Outline of Annual Research Achievements |
先進国における中途失明原因の上位疾患である加齢黄斑変性は滲出型と萎縮型に分類される。滲出型加齢黄斑変性の確立された動物モデルであるアルゴンレーザー誘発脈絡膜新生血管モデルは、結果として生じる線維瘢痕組織を検討する有用性も報告され、脈絡膜新生血管研究および線維瘢痕研究のモデルとして有用性が高い。 テネイシンXノックアウトマウスとデコリンノックアウトマウスを用い、アルゴンレーザー誘発実験的脈絡膜新生血管モデルを作成し、脈絡膜新生血管の変化,並びに瘢痕抑制を野生型マウスと比較検討した。テネイシンXノックアウトマウスでは野生型マウスに比較して、レーザー誘発脈絡膜新生血管は有意に小さく、線維瘢痕組織も少なかった。デコリンノックアウトマウスでは野生型マウスに比較して、レーザー誘発脈絡膜新生血管は大きい傾向にあった。 脈絡膜新生血管組織では、線維・瘢痕化組織が病態で大きな役割を演じ、その形成にはTGFb/Smad3シグナルが関与している。一方、これまでの申請者の所属と他施設での研究成果から、線維・瘢痕化組織の構成成分であるマトリセルラー蛋白質が逆にTGFbリガンドの活性化とTGFb/Smad3シグナルの制御に関与していることが報告された。このマトリセルラー蛋白質には、テネイシンXやデコリンが含まれる。本研究によりテネイシンXやデコリンといったマトリセルラー蛋白質が滲出型加齢黄斑変性の治療ターゲットとなる可能性を示した点で意義深い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度に当大学実験動物室において感染動物が確認され、感染の拡大を防ぐ目的で本研究に使用する予定であったマウスを使用できない時期が数か月あったため。
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Strategy for Future Research Activity |
表現型の研究(in vivo 研究)では、脈絡膜新生血管発症および退縮過程でのテネイシンXとデコリンの発現を確認する。また、テネイシンXノックアウトマウスとデコリンノックアウトマウスを用い、アルゴンレーザー誘発実験的脈絡膜新生血管モデルで、炎症の抑制と脈絡膜新生血管の変化,並びに瘢痕抑制を野生型マウスとの比較検討を進める。最終的には中和抗体の尾静脈投与による再現を目指す。 並行して、背景メカニズムの研究(in vitro 研究)をおこなう。具体的には、上記2種のノックアウトマウス由来の線維芽細胞の筋線維芽細胞への転換、炎症性サイトカイン細胞外マトリックス発現とその時のTGFb1 細胞内シグナル伝達を野生型細胞と比較する。ノックアウトマウス由来の培養マクロファージ(成獣から)についても同様の検討を行う。加えて、上記2種のノックアウトマウス由来の線維芽細胞をフィーダーとした時の培養血管内皮細胞の血管様構造の形成過程での影響を検討する。テネイシンXまたはデコリン由来ペプチド添加の影響も検討する。上記結果よりテネイシンX、デコリンによる脈絡膜血管新生、瘢痕の制御のメカニズムを明らかにし、病態抑制の新規治療戦略の確立を目指す。
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