2016 Fiscal Year Annual Research Report
タスクに応じた英文読解:認知プロセスの解明から方略教示への応用
Project/Area Number |
16H07154
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Research Institution | Dokkyo University |
Principal Investigator |
木村 雪乃 獨協大学, 法学部, 特任講師 (40779857)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 英語教育 / リーディング / タスク / 認知プロセス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,タスクに応じて英文読解中の認知プロセス (語彙・統語の処理,説明,予測,連想) を柔軟に調整できる英語学習者を育成するために,学習者の認知プロセスを解明し,それに基づく方略教示の効果を検証することを目的としている。本年度は「タスク遂行に必要な認知プロセスの特定」を研究課題とし,以下の 2つの実験を実施した。 1つ目の実験では,日本人大学生を対象とし,読解後に要約タスクを日本語/英語のどちらかで遂行することを事前に示し,英文読解,認知プロセスを振り返る質問紙,要約タスクを課した。質問紙には,(a) 下位レベル処理,(b) 上位レベル処理,(c) 読解ストラテジー,(d) タスクに関連したストラテジー,に関わる項目が含まれていた。質問紙の解答を分析した結果,要約タスクの言語によって,必要な認知プロセスやストラテジーが異なる可能性が示唆された。しかしながら,質問紙によって測定される認知プロセスは学習者の自己評価であることを考慮し,続く実験では認知プロセスをより客観的に測定するために,英文読解中の思考を発話させる「発話思考法」を採用した。 2つ目の実験では,日本人大学生を対象とし,読解後に要約タスクを日本語/英語のどちらかで遂行することを事前に示し,発話思考法を用いた英文読解と要約タスクを行った。発話プロトコルと要約タスクの分析結果から,タスクのパフォーマンスには読解中の様々な認知プロセスが影響しており,タスクパフォーマンスが高い読み手ほど認知資源の配分を柔軟に行っている可能性が示唆された。 2つの実験の結果を総合的に考察することによって,タスク遂行に必要な認知プロセスを具体的に特定することが可能になる。このことにより,タスクパフォーマンスを向上させるための具体的な読解指導法を提案することができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究課題である「タスク遂行に必要な認知プロセスの特定」について,質問紙と発話思考法を用いた2つの実験を実施することができた。研究成果については,平成29年度に開催される国内外の研究大会における口頭発表や査読付論文を通して発表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目の研究 (平成29年度) では,これまでに明らかにされたタスク遂行に必要な認知プロセスの知見に基づき,「方略教示に応じた柔軟な認知プロセスの調整」について検証を行う。具体的には,タスク遂行に必要な認知プロセスに関わる方略 (語彙・統語の処理,説明,予測,連想) を読解前に協力者に教示することで,学習者が教示に応じて認知プロセスをどの程度柔軟に調整できるか,また,方略教示によってタスクパフォーマンスが向上するか,を明らかにする。
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