2016 Fiscal Year Annual Research Report
植物内生放線菌由来の二次代謝産物ライブラリーの構築
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16H07167
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
須賀 拓弥 北里大学, 感染制御科学府, 特任助教 (70782366)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 天然物化学 / 植物内生放線菌 / 化合物ライブラリーの作製 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 1942年に、蔓延した結核菌の治療薬としてストレプトマイシンが発見され、戦後の日本においてストレプトマイシン取得を目的に、その生産菌である放線菌ストレプトマイセス属菌が探索された。半世紀以上もの間、ストレプトマイセス属菌が有用な二次代謝産物の探索源として用いられ、発見されたそれらは合成化合物ライブラリーに代えがたい知見を与えてきた。ストレプトマイセス属以外の放線菌(希少放線菌)からも二次代謝産物の報告はあるものの、分離頻度の低さや生育の遅さから探索源としてはあまり用いられてこなかったが、近年の研究結果から希少放線菌は多くの二次代謝産物生合成遺伝子をコードしていることがわかっている。そこで、申請者は希少放線菌が多く分離される植物内生放線菌を培養し、その培養液から二次代謝産物の取得後ライブラリーを作製し、植物病原菌を含む抗菌活性や植物に対する成長促進作用を調べることを目的とした。 2. 植物内生放線菌34株を9種類の培地で培養、抽出することで約300種類の培養液抽出物を得た。それらを粗精製し、HPLCにて解析を行った。HPLC解析によってピークが認められた菌株について、培養、目的物質の精製および構造解析を行った。7株を培養し、新規化合物3種、既知化合物6種および未知化合物1種を単離した。 3. サッカロスリックス属K12-0360株培養液からインドール環の5位にニトロ基を有する5-ニトロトリプトファンを単離した。天然からインドール環の5位にニトロ基を有する化合物が単離されたのは初の知見である。 4. アロストレプトマイセス属K12-0794株培養液からK12-0794AおよびB物質を単離・構造決定した。本物質は22員環ポリエンマクロライドを母核とし、その類縁体はわずか1例のみ報告されていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までに対象菌株を9種類の培地で培養および抽出し、HPLCにて解析を行った。目的化合物の大量取得を目的に、選定した菌株を20 Lジャーファンメーターにて培養した。しかし、小スケールでは純粋培養できるものの、20 Lジャーファンメーターではコンタミネーションが多発し、培養の成功率は3割程度であった。その原因が空気中に存在する菌が極微量に混入すると考え、種培養および本培養方法を改良し、問題を克服した。 現在までに7株を培養し、10種類の化合物を取得している。予定では、2年間で多種多様な母核を持った50化合物以上を目標としており、数ではやや遅れていると考えられる。母核に関しては、アミノ酸、ポリサッカライド、アングサイクリンおよびマクロライドと多様性に富んだ内容となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 本年度は昨年度に取得された化合物の量的供給を行う。中でも、アロストレプトマイセス属K12-0794株から得られた化合物は新規物質であり、大変ユニークな構造を有していた。本化合物の類縁体は1種類しか知られておらず、絶対立体の決定や全合成研究も未だなされていない。そこで、本化合物の絶対立体を構造を決定する。そのため、生産培地の改良および培養条件を検討し、300 mgの取得を目指す。グラブス試薬などを用いた化学修飾、X線回折法を試み、絶対立体を決定する。 2. 引き続き、菌株の選定、培養、化合物の単離および構造解析を行う。 3. 現在までに新規物質を含む10化合物のライブラリーを作製した。本年度は新たに20化合物を足し、30化合物を用いて、植物病原菌を含む抗菌活性や植物に対する成長促進作用などを評価する。 4. また、得られた結果については、論文および学会発表を通して発表していく。
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