2016 Fiscal Year Annual Research Report
道観関連資料を基軸とした明代道教の宗教活動の基礎的研究
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16H07170
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
酒井 規史 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 講師 (60781929)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 道教 / 道観 / 道士 / 中国思想 / 中国史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は明代における道教の宗教活動の実態を解明することを目的とし、主に道教の宗教活動の基盤となる道観に関連する資料を中心に調査と考察を行うものである。本年度は研究計画にもとづき、文献調査を重点的に行い、その成果を国際学会において発表した。 文献調査では、計画通りに、明代初期の首都・南京の道観についての資料を集めた『金陵玄観志』と、関連する資料の調査を実行した。その際、道観の管理・運営制度に特に注目して調査を行った。また、南京だけでなく、その周辺の江蘇省の道観についても、これまで蓄積してきた宋代・元代のデータを合わせて考察し、各道観の沿革や動向を整理した。さらに、各道観に関連する道士の伝記資料も調査した。その結果、宋代から元代を経て、明代初頭にまで至る、南京と江蘇省の道教の動向について見通しを得ることができた。 その成果をもとに、2017年3月24日から25日かけてフランスの高等研究実習院(パリ)で開催された国際学会「Holy sites and pilgrimages. The Daoist living tradition and comparative perspectives on East Asian Buddhist, imperial and local practices」において、「南京朝天宮前史―元代江蘇道教與龍虎山道士」という題目で研究発表を行った(中国語を使用。)主に宋代から元代後半の南京とその周辺における道士の活動や道観の管轄方法に焦点を当てた考察ではあるが、明代初頭の状況にも言及し、今後の方向性を示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
文献調査はおおむね順調であり、上記のように、これまで蓄積してきた宋代・元代のデータと、本年度に新しく調査を開始した明代の資料を合わせて整理・考察することができた。また、それにより、道観のデータベース作成のために不可欠な資料の蓄積も同時に行った。本年度は研究期間が短いこともあり、論文を発表することはかなわなかったが、国際学会で口頭発表によって研究成果を発信することができた。 ただし、文献調査を進めることを優先したため、予定していた道観の遺跡や文物の現地調査を実施できなかった。また、各地の図書館における宮観志の調査も行えなかった。それらは上述の文献調査の補助的なものではあるが、新たな発見をもたらす可能性があり、研究の視野を広げることができたかもしれなかった。 上記の理由から、進捗状況の評価としては「(3)やや遅れている」が妥当と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、明代初期の南京および周辺地域の道観に関する文献の調査と考察を進め、その成果を各種学会における口頭発表や論文で発信していきたい。特に、明代初期において重要な道観であった朝天宮と神楽観を中心に、道士の活動や道士間のネットワークについて考察する。並行して、従来から蓄積している道観のデータを、統一したフォーマットで整理し、道観のデータベースを公開する予定である。 また、本年度は実施できなかった、道観の遺跡や文物を対象とした現地調査を行う。候補地としては、南京の朝天宮の遺跡(現在は南京市博物館)や白馬公園(明代の石碑が保存されている)、南京周辺の茅山などを検討している。また、海外をふくめた各地の図書館での資料調査も行う。宮観志の版本調査によるテキストの系統の整理を主な目的とするが、新たな資料が発見できた場合には文献調査にフィードバックするようにしたい。
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Research Products
(1 results)