2016 Fiscal Year Annual Research Report
Theory and Experimental Setup for Set based Model Identification of Genetic Circuits using Frequency Response
Project/Area Number |
16H07175
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
堀 豊 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 助教 (10778591)
|
Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
|
Keywords | 制御工学 / システム同定 / マイクロ流路 / 遺伝子回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目標は,微生物の細胞内で動作する遺伝子回路のダイナミクスを系統的に数理モデル化するためのシステム同定法,および反応系の入出力データを取得するためのマイクロ流路実験系を構築することである.特に,生物システムに特有の不確かさ(データの少なさや確率ノイズ)を定量的に扱うために,反応系の入出力データに整合する全てのパラメタ集合を同定するアルゴリズムを構築し,データの取得に必要な実験系を用いて概念実証を行う. この目標に向けて,本年度は大きく分けて次の3つの課題に取り組んだ.1. 遺伝子回路の集合同定理論の基礎の構築,2. 反応系に動的な入力を与えることが可能なマイクロ流路実験系の構築,3. マイクロ流路実験系の動作確認. 基礎理論の構築として,まず,遺伝子の転写・翻訳のダイナミクスを表現する簡易な数理モデルに基づいて,不確かさの大きな計測データから,数理最適化を用いてデータと整合するすべてのパラメタ集合を系統的に同定する方法を検討した.検討の結果,確率ゆらぎの大きな遺伝子回路に対する同定理論の着想を得ることができ,遺伝子回路の出力の確率モーメントから確率モデルのパラメタを同定する凸最適化アルゴリズムを構築することができた.この結果は,研究開始当初に想定していた方法よりも数学的に発展的で,かつ実用性の観点からも優れている. パラメタ同定法の構築と並行して,Polydimethylsiloxane (PDMS) 樹脂製のマイクロリアクタの設計と製作を行った.製作したリアクタを用いることで,望みの化学物質を望みのタイミングで反応系に印加でき,蛍光観察により分子濃度のダイナミクスを計測できるようになった.本年度は,流路中に設けた空圧制御式のバルブを計算機プログラムで制御することで,反応容器への入力をユーザの指定通りに制御できるところまでを確認した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論面では,当初の予定通り,同定理論の基礎的な検討を完了できた.特に,確率モデルの集合同定法の着想を得たことにより,当初の予定よりもより数学的に発展的かつ実用性の高い結果を得ることができた. 一方,マイクロ流路実験系の構築では,実験系の構築および動作確認を行うことができた.また,来年度以降に利用予定の遺伝子回路のサンプルを準備するところまで完了している.以上のことから,研究は概ね順調に進展していると言える.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は,本年度に構築したマイクロリアクタを用いて,反応系に印加する分子の濃度を周期的に変化させながら顕微鏡で経時観察を行う.そのために,まず,流路制御用の計算機プログラムを改変し,周辺装置の構築を行う予定である.その後,遺伝子回路に印加する誘導物質の濃度を動的に変化させて遺伝子発現の経時計測データを取得し,反応系の周波数応答特性を明らかにする.これらの実験データを用いて遺伝子回路のパラメタ集合同定を行うことで,構築した理論の有用性を実証する予定である.
|
Research Products
(3 results)