2016 Fiscal Year Annual Research Report
エキソソームをターゲットとしたパーキンソン病の病態解明と新規治療法の開発
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16H07185
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
常深 泰司 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50401344)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | エキソソーム / iPS細胞 / ドーパミン細胞 / パーキンソン病 / ライソゾーム / αシヌクレイン / FYVEタンパク質 / ALIX |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的1は胞内小胞体の形成におけるPARK9の生理学的役割を解明することであるが、まず健常人4名とKufor-Rakeb症候群患者2名のiPS細胞よりプロトロールに則ってドーパミン細胞への分化を試みた。iPS細胞は免疫染色にてチロシン水酸化酵素陽性を確認し、HPLCにてドーパミン産生を確認した。さらに免疫染色、ウエスタンブロットにてライソゾーム機能障害、αシヌクレインの蓄積を確認した。Nanoparticle tracking analysisによりエキソソームの数は減少していることが判明し、電子顕微鏡にて胞内小胞体の減少も確認した。これらの結果は、ドーパミン細胞が、繊維芽細胞や他のセルラインを用いた実験で認められた表現系を再現していることを示している。 このドーパミン細胞を用いてATP13A2/PARK9変異の影響がFYVEタンパク質の細胞内分布に与える影響を共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察するために条件検討を行なった。 また目的2はPARK9の機能障害によるエキソソームとαシヌクレインの放出障害が神経細胞に与える影響を解明することであるが、ESCRT関連タンパク質であるALIXに対するshRNAを介した発現抑制にてエキソソームの数を増やすことを試みてH4細胞で成功した。5つのshRNAを試みて、そのほとんどでALIXの抑制により胞内小胞体とエキソソームが増加し、αシヌクレインの細胞内の蓄積低下を認めた。興味深いことにESCRT経路非依存的にエキソソーム放出を増加させる中性スフィンゴミリナーゼ(nSMase)の投与ではαシヌクレインの放出は亢進せず、単なるエキソソームの数を増やすのではなく、その過程がエキソソームに含まれる内容物を規定することを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は患者と健常人のiPS細胞の培養と、ドーパミン細胞への分化に成功し、その細胞の基本的な分析を行った。その結果、これまでの報告通りの基本的なドーパミン細胞としての性状を有する神経細胞が作成されていることがを確認した。さらにこれらの細胞を用いて免疫染色、さらにlive cell imagingによりFYVEタンパク質の細胞内分布に与える影響を検討するための条件検討を行った。以上より目的1の「胞内小胞体の形成におけるPARK9の生理学的役割を解明する」ことの基礎的実験は完遂したと言える。 またESCRTIII関連タンパク質で胞内小体生成に重要な役割を果たしているALIXに対するshRNAを用いた発現抑制に成功した。H4細胞でALIXの発現を低下させたところ、胞内小体の増加に伴いエキソソーム放出が増加し、αシヌクレインの放出が促進されて細胞内のαシヌクレインの低下を認めた。また中性スフィンゴミリナーゼの投与でもエキソソームが増加したがαシヌクレインの放出は促進されなかった。これらは目的2(平成29年度)の「PARK9の機能障害によるエキソソームとαシヌクレインの放出障害が神経細胞に与える影響を解明する」に該当する内容であるが、1年目に基礎的なデータをまとめることに成功した。 以上より、本研究は概ね順調に進んでいると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、確立されたドーパミン細胞モデルを用いてALIX抑制の長期効果を解明する。H4細胞の結果からは、ドーパミン細胞でもエキソソームとαシヌクレインの放出が促進し、細胞内蓄積が経験すると想定される。また中性スフィンゴミリナーゼ(nSMase)の投与も試みる。 胞内小胞体の形成におけるPARK9の生理学的役割を解明するため、条件検討出来次第、EEA1、Hrsの細胞内分布を細胞分画法にて生化学的に、そして共焦点レーザー顕微鏡を用いて免疫組織にて解明する。 以上、申請書の計画通り研究を進めていく予定である。
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[Presentation] エキソソームをターゲットとしたパーキンソン病の病態解明と新規治療法の開発2016
Author(s)
Taiji Tsunemi, Clarissa Valdez, Katarina Trajkovic, Asako Yoroizaka, Kana Hamada, Sohee Jeon, Malini Krishna Vangipurum Suresh, Nobutaka Hattori, Dimitri Krainc
Organizer
第39回日本分子生物学会年会
Place of Presentation
パシフィコ横浜
Year and Date
2016-11-30 – 2016-12-02
Int'l Joint Research
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