2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16H07186
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
向井原 健太 順天堂大学, 医学部, 非常勤助教 (50778991)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 胞巣状軟部肉腫 / チロシンキナーゼ / チロシンキナーゼ阻害剤 / 分子標的治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
胞巣状軟部肉腫(以下ASPS)は若年者に発生する悪性軟部腫瘍の一つであり、既存の化学療法に抵抗性を示す難治性の疾患のため早期の新規治療開発が強く求められている。近年、治療分子標的としてのチロシンキナーゼ(以下TK)は様々な悪性腫瘍においてその発現異常が報告されており、TK阻害剤の開発により、多くの癌腫において予後改善に大きく貢献してきた。ASPSにおいても疾患特異的な融合遺伝子がTKの発現異常に関与することが分かってきているが、未だ新規治療法の開発には至っていない。 本研究は難治性かつ希少がんであるASPSの治療成績の改善を目指し、新規治療法の開発を進める。研究の特徴として、(1)ASPSにおけるTK発現データベースの構築とそれを基盤とした新規治療法標的分子候補の同定、(2)それら候補タンパク質のASPSにおける悪性度・薬剤奏功性に関わる細胞レベルでの分子生物学的機能の解明、(3)実際のマウスモデルによるTK阻害剤のの抗腫瘍効果の評価。以上の3つのステップを順次達成し、新規治療標的分子、その阻害剤の臨床的有用の可能性を検討し、早期にASPSの生命予後改善を目指す。 現在までに申請者を含む研究グループは非常に希少であるASPSの臨床凍結検体を15例収集することに成功し、タンパク質抗体ベースの網羅的発現解析を行い、発現異常を認める14種類のTKタンパク質の同定に成功している。また、その得られた発現プロファイルから新規治療標的として有望な複数のTK分子を選定し、それらを標的とする5種類の既存TK阻害剤のin vitro抗腫瘍効果を評価するための予備実験に成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)新規治療標的TKとTK阻害剤のスクリーニング:ASPSの臨床検体から得られた抗体ベースのプロテオーム解析(キノームプロファイリング)を行い、正常組織に比べASPS腫瘍部で高発現する14種類(全90種類中)のTKを同定した。また得られたプロファイルから新規治療標的として有望な3種類のTK(TK-A, TK-B, TK-C)を同定し、これらのTKをターゲットとする既存のTK阻害剤を5種類(TKI-A, TKI-B, TKI-C, TKI-D, TKI-E)を選定した。 (2)TK阻害剤のin vitro抗腫瘍効果:ASPS細胞株を用いてin vitro機能解析を行い、TK阻害剤投与下では細胞の増殖・浸潤能が濃度依存的に抑制され、さらにアポトーシスも誘導される結果が得られ、これらの阻害剤がin vitroレベルでASPSに対して高い抗腫瘍効果を持つことが示された。 (3)TKを介した細胞内シグナル伝達の抑制効果:5種類のTK阻害剤の中でより高い抗腫瘍効果を示したTKI-AとTKI-BのターゲットであるTK-AとTK-Bに着目し、これらのTK阻害剤投与下ではTKリン酸化とその下流分子の発現が共に濃度依存的に抑制された。 これらの結果から(1)において同定したTKがASPSにおける阻害剤の抗腫瘍効果を惹起するメインターゲットであり、かつ腫瘍の悪性化に深く寄与していることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)ゼノグラフトモデルマウス作成:in vivoレベルでのTK阻害剤の抗腫瘍効果を評価するため、免疫不全マウスを用いて腫瘍細胞を皮下移植し、移植後数週間で評価可能な腫瘍径に達するゼノグラフトモデルの作成に着手し、高い再現性と個体間差異の軽減を可能にする至適条件を検討する。 (2)ゼノグラフトモデルによる阻害剤の抗腫瘍効果・TK活性への影響の評価:TK阻害剤の薬効を評価するに当たり、ゼノグラフトモデルマウスに対してTK阻害剤を経口投与し、経時的・濃度依存的な腫瘍の増大抑制効果を検討する。腫瘍検体におけるTK発現レベルの評価は薬剤投与期間終了後に摘出した腫瘍塊を用いて免疫染色を行い阻害剤投与によるTK活性への影響をを評価する。 (3)ゼノグラフトモデルによる阻害剤の毒性評価:TK阻害剤投与後のマウスに対して、血液・生化学・尿検査の評価、解剖による各臓器への詳細な毒性影響も評価する。 今年度(1)~(3)の実験を進めることにより、前臨床レベルでのTK阻害剤の有用性を評価し終え、有望な阻害剤についてはさらなるヒトでの臨床試験につながり、ASPSに対する既存TK阻害剤の適応拡大を促進することが期待できる。
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Research Products
(1 results)