2016 Fiscal Year Annual Research Report
ドミニコ会文献群の本文整定を通した再評価と、それを用いた日本語音韻史研究
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16H07190
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
岩澤 克 上智大学, 文学研究科, 研究員 (70781087)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | ドミニコ会文献 / キリシタン資料 / 日本語音韻史 / コリャード / イエズス会文献 / 中世日本語 / 電子データ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はドミニコ会文献群の電子化テキストと、それに基づいた資料性の再評価を目的としたものである。キリシタン資料研究はイエズス会文献群を対象としたものが主であり、従来の研究でほとんど着目されることのなくなったドミニコ会文献群の電子化テキストは未だ存在せず、計量的な観点から、そこに現れる日本語本文の正当性が論じられることはなかった。 ドミニコ会文献群の本文を検討した上で、それを日本語史研究に資するものであるかの再評価を行うことで、新たな観点から日本語史を眺める好材料を得ることとなる。それによって、従来のキリシタン資料研究、日本語音韻史研究において、未解決のまま、残されてきた多くの問題を解決する可能性が生じることが期待される。 本年度は、その研究の基盤となるドミニコ会文献群本文の電子化のため、文字入力を重点的に行った。ドミニコ会文献群を代表するドミニコ会士ディエゴ・コリャード著作の文献群『羅西日辞書』・『懺悔録』・『日本文典』のみならず、コリャード自筆本『西日辞書』や、従来の研究で着目されることのなかったマニラ版『ロザリオ記録』・『ロザリオの経』などのコリャード以外の人物が記したドミニコ会文献も合わせて、本文の入力作業を進めていった。 さらに、本年度作成したドミニコ会文献群の電子化テキストを活用し、ドミニコ会文献群の成立過程や資料性に関する書誌的な考察を行った。その成果は、国際シンポジウム「キリシタン時代の宣教に伴う演劇の言語 International Symposium on Language of Theatre in the Christian Mission in Japan」において、「Japanese Theatrical Terms in Missionary Documents」という形で口頭発表した。また、『上智大学国文学論集50』において、「コリャード『羅西日辞書』続篇の成立過程とその出典について」という論文を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の基礎となるドミニコ会文献群の電子データ化が順調に進展しており、今後はその成果を活用し、ドミニコ会文献群の本文を整定し、資料性を再評価することに集中することができるため。
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Strategy for Future Research Activity |
ドミニコ会文献群を研究対象とするためには、その資料性を確固たるものとする必要がある。その問題を解決するためには、ドミニコ会文献群を対象とした論考に着手する前に、その本文に内在する欠陥の指摘と訂正を行っていく必要性がある。現存する主要なドミニコ会文献群の本文の電子データ化は進展しているので、諸本の対校を行った上で、計量的な情報解析が可能な状態を整える。 そして、上記の手順で作成したドミニコ会文献における本文の電子テキストデータから、音節表記の変異を全て抽出し、文献間・各文献内での分布、音韻環境ごとによる分析などを行い、ドミニコ会文献群における表記法の整理を進める。さらに、ドミニコ会文献群のうち、刊本の稿本となったコリャード自筆本類との対比を行う。これにより、印刷過程で混入した誤植・誤記類を摘発する。そして、既に研究が大きく進展しているイエズス会資料との計量的な比較を行う。そこで現れる両者の共通点・相違点の整理と分析を行うことで、ドミニコ会文献群における表記の特質を明らかにし、その成果を学会で発表する。
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Research Products
(3 results)