2016 Fiscal Year Annual Research Report
終末期がん患者への死亡場所の意思決定支援:訪問看護師と病棟看護師の比較
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16H07192
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
石川 孝子 上智大学, 総合人間科学部, 助教 (90779927)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | アドバンスケアプランニング / 終末期がん患者 / 訪問看護師 / 病棟看護師 / 生活予後の説明 |
Outline of Annual Research Achievements |
終末期を迎えた時、残された時間を自宅で過ごすことを望む人は多く、一般国民を対象とした調査では40~60%と報告されているが、がん患者の自宅死亡率は8.9%にとどまっており、死亡場所について希望と実際との間で隔たりが大きいことが推察される。終末期がん患者や家族のQOLは低く、療養の場はQOL改善に影響することから、がん患者の死亡場所についての希望と実際の隔たりを少なくすることは重要な課題である。 がん患者の多くが希望する死亡場所である自宅死亡の関連要因として、患者・家族が希望を表明すること、患者と家族の希望が一致していること、医療従事者が患者や家族の希望の確認をしていることが挙げられる。さらに、希望死亡場所の表明には、患者・家族の予後理解が明らかになっている。このことから、終末期がん患者の希望死亡場所での死亡の実現には、医師による余命の告知の有無を確認し、必要な場合には看護師が医師に余命の告知を促し患者・家族に予後理解を促すこと、希望を確認すること、といった死亡場所の意思決定支援を実践することが重要であるといえる。 先行研究では、病棟看護師に比べて訪問看護師は死を肯定的に捉えていること、死の看取り満足度が高いことが明らかになっている。訪問看護師と病棟看護師では、予後理解を促す支援に違いがあるのではないかと思われるが、その知見はない。 H28年度は、インタビュー調査により調査票を完成した。H29年度は、完成した調査票により訪問看護師と病棟看護師の実施する死亡場所の意思決定支援の実態および希望死亡場所での死亡の実現との関連、および患者に対して予後理解を促す支援を実施する役割認識の違いを明らかにすることで、よりよい死亡場所の意思決定支援を実施するための示唆を得ることができ、終末期がん患者とその家族にとって質の高い終末期ケアの提供およびQOL向上に寄与する可能性があると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H28年度は、アンケート調査を計画した対象者である、終末期がん利用者を受け持ったことのある訪問看護師2名、および終末期がん患者のケアに携わる機会がある、内科系および外科系の一般病棟に勤務する病棟看護師2名に対してインタビュー調査を実施した。 このインタビュー調査では、訪問看護師と病棟看護師の両者を経験している看護師にインタビューをすることができたため、あらかじめ計画していた対象数のインタビューをすることは出来ていないが、調査票作成の目的は達成することが出来た。そのため、おおむね順調に進展していると評価出来る。
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度は、完成した調査票にて、全国から無作為抽出した1,000事業所の訪問看護師のうち、終末期がん利用者を受け持ったことのある訪問看護師および全国の100床以上の病院から無作為抽出した100施設のうち、終末期がん患者のケアに携わる機会がある、内科系および外科系の一般病棟に勤務する看護師に郵送法による自記式質問紙調査を実施し、分析および考察を実施する計画である。 考察の際には、内容妥当性を高めるため、訪問看護師および病棟看護師に臨床現場での分析結果解釈の際のご意見を伺いながら臨床現場との乖離がないように努めていく。
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