2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16H07204
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Research Institution | University of the Sacred Heart |
Principal Investigator |
小島 麻子 (青島麻子) 聖心女子大学, 文学部, 講師 (10781966)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 国文学 / 平安 / 物語 / 婚姻 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、婚姻という平安朝物語最大のテーマに着目することで、各作品の虚構の方法を明らかにすることを目的としている。その際、まずは史料の精査を行うことで当時の婚姻慣習の実態を把握することを目指し、次にその成果を踏まえて作品の精読を行うことで新たな読みを提示することを目指している。 前者の史料精査に関しては、今年度は特に三日夜の餅と露顕についての研究に力を入れた。具体的には、12世紀初頭に成立した儀式書である『江家次第』の婚儀の記述を中心に、『李部王記』『御堂関白記』『小右記』などの古記録の該当記事との比較調査を行った。これにより、平安時代の婚姻儀礼の実態が、歴史的変容も含めて把握できたと考えている。この成果については、後述する論文の中でも言及している。 後者の作品精読に関しては、本年度に投稿(掲載決定済)した論文「『落窪物語』における婚儀 ―道頼と落窪の君の結婚を中心に―」がある。これは、平安朝物語の中でも例外的に婚姻儀礼の様子を詳述する『落窪物語』に焦点を当て、婚姻儀礼の描写がいかに物語展開に関わっているのかを論じたものである。具体的には、道頼と落窪の君の結婚儀礼の次第が詳細に辿られることで、互いの心が徐々に通い合う様子が丹念に描き出されていること、ただし一方で、物語展開上の都合により、当時の慣習から逸脱するような記述が看取できることなどを指摘した。なお、この論文執筆の過程で、『源氏物語』における婚姻儀礼の描写についても検討する必要を感じたので、次年度中にその成果を発表すべく、研究中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年の研究実施計画として挙げていた「古記録の精読作業」並びに「婚姻儀礼に関する研究」については、計画通り実施し、成果をまとめることができた。 ただし、当初の計画に入れていた「夫婦同居の際の邸宅の所有者に関する研究」への着手はできなかった。その理由としては、上記の「婚姻儀礼に関する研究」において『落窪物語』を中心とした作品分析を行う過程で、『源氏物語』を対象とした婚姻儀礼の研究を行う必要性を感じ、新たにそちらの作業に着手したからである。 このように、若干の計画修正はあったものの、全体的には概ね当初の予定通りに進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の『落窪物語』の婚儀に関する研究を踏まえ、『源氏物語』の婚儀についての考察を引き続き進め、成果をまとめることに努めたい。その際、必要に応じて『栄花物語』や後期物語も視野に入れた分析を行うつもりである。 また、古記録精査は本研究の基礎的作業として継続して行うつもりだが、今後は、特に婚姻居住形態や近親婚に焦点を当てての調査を進めていきたい。
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Research Products
(1 results)