2016 Fiscal Year Annual Research Report
歯周病原菌が産生する硫化物によるチタンインプラントの腐食挙動の解明
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16H07214
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Research Institution | Tokyo Dental College |
Principal Investigator |
原田 麗乃 東京歯科大学, 歯学部, 助教 (30778642)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | チタン / 腐食 / 硫化物 / インプラント |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、硫化物濃度およびpHの異なる硫化物溶液中でのチタンの腐食挙動について検討し、アルカリ性の溶液中では硫化物の濃度に依存してチタンの変色が起こることを示した。さらに、その変色の要因がチタン表面で起こる酸化反応により形成する厚い酸化膜によるものであることを明らかにした。しかし、口腔内での硫化物の生成を考えると、口腔内細菌の産生する揮発性硫化物があり、これらによるチタンへの耐食性の影響を調査することを目的とした。 歯周病原菌のなかで硫化物を生成するものとして、まず始めにPorphyromonas gingivalis (P. gingivalis) について、その生成する揮発性硫化物やそのバイオフィルム形成によるチタンの耐食性について以下の項目について評価検討を行った。 (1) P. gingivalisが産生する揮発性硫化物による純チタンの腐食挙動を変色、光沢度の変化、表面観察により評価した。 (2) P. gingivalisを純チタンの組成分析、構造変化の調査、表面反応を検討した。 評価は7日と14日で行った。硫化物を測定したところ、細菌の培養後の溶液からは十分の硫化水素とメチルメルカプタン類が検出された。結果として、14日間という浸漬期間ではP.gingivalisの放出する揮発性硫化物によるチタンの腐食は見られなかった。変色、光沢度の変化、チタンの溶出は見られなかった。しかし、チタンの表面からは溶液中に含まれている硫黄が検出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在研究は計画通りに進んでおり、上記の結果を論文にまとめている。14日間という浸漬期間では口腔内細菌P.gingivalisによるチタンの腐食は見られなかったが、チタンの表面から溶液中に含まれている硫黄が検出された。使用した培養液の硫化物濃度は健全な口腔内の100倍の揮発性硫化物が検出されたため、14日は十分な期間と考えた。次はチタン合金でP.gingivalisによるチタンの腐食挙動を検討する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の予定では、まずこれまでの研究成果を論文にまとめて投稿することである。その後、チタン合金でP. gingivalisによるチタンの腐食挙動を検討する必要がある。 去年はオーラルクロマの購入を予定していたが、一種類の細菌しか使用していないのと、硫化物の有無のみ確認できれば十分であったため、色彩計の購入を優先し、硫化物の濃度はガステックと検知管を使用した。今後の研究計画では歯周病患者の口腔内から直接採取した細菌を使用してチタンの耐食性を研究をしたいと思っている。その場合、揮発性硫化物濃度を定量的に分析できる機器が必要なため、今後オーラルクロマの購入を考えている。P. gingivalis以外の硫化物を生成する口腔内細菌の選択や口腔環境を模倣した環境での研究の設定に有益なデータの収集ができる。
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