2016 Fiscal Year Annual Research Report
契約化する社会福祉における質及び権利保障に関する法学的研究
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16H07240
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
伊奈川 秀和 東洋大学, 社会学部, 教授 (90304708)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 権利保障 / 内部・外部評価 / 契約 / 認可 / 公募 / 福祉サービス / 計画 |
Outline of Annual Research Achievements |
2002年法に始まるフランスの福祉サービス利用者の権利保障の強化の流れが、如何に制度的に担保され規整制度に組み込まれているのか文献調査と現地調査により実態を把握し分析した。 具体的には、フランスで公刊されている福祉サービスの内部・外部評価制度、施設・サービス計画、個人別処遇計画等に関する文献を調査し、これら利用者の権利保障に関わる仕組みが契約制度の下で機能しているか分析した。さらに、2009年法により、サービス・施設事業者の規制が当該事業者の申請を起点とする伝統的な許認可法制、指導監督等を中核とするものから、地域のニーズを踏まえ認可権者が行う企画公募を起点に認可が行われ、認可更新も義務化された外部評価等の結果を考慮して行われるなど、ここ15年の間に制度が大きく変質することとなった。 このことは、伝統的な許認可、指導監督等によりサービスの質及び利用者の権利を担保・保障する我が国の制度から見ると、パラダイム転換というべき状況である。かかる制度の実施状況を把握する必要があることから、現地の福祉関係の専門家、研究機関、事業者団体等を訪問し現地調査を行った。その結果、事業者が企画公募に対応し、利用者の権利保障にとって重要な評価制度を実施するだけの能力を備えるためには、事業者の集約化・大規模化が必然であり、その傾向に拍車がかかっていることなどが確認できた。また、質の確保とも関係する報酬制度の関係では、要介護高齢者制度では体系化が進んだが、これまで施設間で差が大きかった障害者分野についても見直しが検討されていることが判明した。 総じて言えば、地方医療庁の創設に代表されるように、利用者の権利保障に関する医療分野の動きが福祉分野にも影響を与え、近年のその動きが加速化していると言える。このことは、契約制度の下で利用者の権利保障が重要になっている我が国にとって参考となる動きである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、フランスにおいてサービスの質の確保及び利用者の権利保障が如何に制度的に担保され、実際に機能しているかを文献調査及び現地調査により明らかにすることを予定しており、その何れも当初の予定通り実施できたことから、おおむね順調と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度においては、フランスの制度及びその動向を踏まえ、我が国における許認可、指導監督等を基本とする制度の下で実施されているサービス評価、契約制度等が利用者の権利保障及びサービスの質の確保との関係で如何に機能しているのかを把握し、分析を加える。さらに、かかる契約制度に密接に関係する諸制度が伝統的な許認可法制や計画法制との関係で如何にあるべきかについても検討する。
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