2016 Fiscal Year Annual Research Report
触法精神障害者の社会復帰支援計画におけるソーシャルワーカーの役割:日米比較研究
Project/Area Number |
16H07252
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
戸井 宏紀 日本女子大学, 家政学部, 研究員 (00780397)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 社会福祉関係 / ソーシャルワーク / 触法精神障害者 / 社会復帰支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、精神障害を持つ被収容者に対する社会復帰支援計画の策定と実施において、ソーシャルワーカーが担う役割に関して、日本とアメリカの矯正精神医療システムを比較検討することにより、現状の課題と今後の貢献可能性について示唆することを目的としている。 平成28年度は、触法精神障害者の社会復帰支援計画の実施状況に関して、日本及びアメリカの文献調査、資料の整理を行い、聞き取り調査実施のための事前検討を行った。その上で、アメリカにおける聞き取り調査の候補先としたコネティカット州の矯正システムを対象として、29年3月に実地調査を行った。コネティカット州の矯正医療システムの改革を十年来担ってきた責任者(精神科医)と面談し、触法精神障害者の社会復帰支援計画の実施状況について聞き取りを行った。また、同州に加え、アメリカにおいて触法精神障害者の社会復帰支援に関する先進的取り組みがなされている、他州の状況に関する情報提供と、専門的助言を受けることができた。さらに、州内の刑務所において長年ソーシャルワーカーとして勤務してきた研究者と面談し、社会復帰支援計画の対象者の選定方法、支援計画の構成内容、関係機関及び支援者との連携状況について、聞き取りを行った。 同時期に開催された、当該分野の研究者・実践家が多数参加する国際会議(Academic & Health Policy Conference on Correctional Health)への参加を通して、各州の先駆的な実践と研究動向に関する情報収集を行うとともに、他州矯正システム関係者からも、今後の調査協力への意向を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度は、聞き取り調査実施に向けた事前検討のため、触法精神障害者の社会復帰支援計画の実施状況に関する日本及びアメリカの文献調査、資料の読み込みと、それに基づく比較研究の分析枠組み構築に予想以上の時間を要したため、調査の日程調整の難航が予測されたアメリカにおける現地調査を優先して行った。 一方で、日本における社会復帰支援計画に関しては、関連学会(日本司法福祉学会、日本司法精神医学会、日本犯罪心理学会、日本更生保護学会等)への参加による研究動向の調査、情報収集は積極的に行ったものの、28年度内における聞き取り調査実施までには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、コネティカット州に関する調査継続と、他州における社会復帰支援計画の調査も計画する。また、28年度に調査を実施できなかった日本国内の矯正システムに関しては、医療専門施設(医療刑務所全国4ヶ所)から1ヶ所、医療重点施設(全国9ヶ所)から1ヶ所を選定し、社会復帰支援計画の構成内容の調査を計画する。平成29年度は特に以下の二つの項目に焦点をあて、比較分析を行う。 (1)多職種チームに関する比較調査:社会復帰支援計画の策定と実施において、どの段階でどのような職員・専門職がかかわるのか、特に多職種チームの活動に焦点を当て、日米の比較分析を行う。 (2)ソーシャルワーカーの役割の日米比較分析:日本においては、社会福祉士・精神保健福祉士が、疾病や障害を持つ被収容者に対して、医療や福祉サービスにつなげ、出所後の地域生活に向けた相談援助を行っている。本比較研究では、触法精神障害者に焦点を当て、社会復帰支援計画の策定と実施において、ソーシャルワーカーが具体的にどのような役割を果たしているか、日本とアメリカの実践状況を調査し、明らかにする。 比較分析に際しては、触法精神障害者を取り巻く歴史的・社会的背景の差異、そして矯正施設における社会復帰支援計画の実施環境の違いを精査した上で、現状の課題と貢献可能性について、示唆が可能となるようにする。最終的に調査結果をとりまとめ、学会発表・論文投稿を行い、研究成果を矯正、社会福祉研究者、実践家をはじめ、広く社会に発信することを計画する。
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